臨床検査技師が年収1000万円を達成できる訳がない。
事実、技師長・科長に出世して検査室運営・病院経営に携わったとしても、医療機関で働く限り臨床検査技師の年収が1000万円を超える可能性は限りなく0%です。
ところが臨床検査技師の資格を活用できる他職種へ転職すれば年収1000万円もあながち夢ではありません。
この記事では、臨床検査技師の資格を活かして年収1000万円を目指すロードマップを具体的に解説します。
結論からお伝えすると、営利型法人で優秀な成績を残せば年収1000万円は達成できます。
年収1000万円を本気で目指す方、今より少しでも年収を上げたい方は、本記事の内容を参考に今後の方向性を検討してみてください。
なお、ヘルスケア業界の営利型法人の求人は非公開のことが多く、転職エージェントを活用しなければ応募すら難しいです。
https://rinten-sup.com/5-recommended-recruitment-agents-for-clinical-laboratory-technicians/
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営利型法人・非営利型法人の稼ぎやすさの違い
病院などの医療法人は非営利型法人と呼ばれており、社会貢献のために存在していることからそもそも利益を従業員に還元する仕組みがありません。
一方、医療機器メーカーや製薬メーカー、開発業務受託機構などの企業は営利型法人であり、利益を追求して経済の発展に貢献することが存在意義。得られた利益は株主や従業員に還元してくれるため、非営利型企業より稼げて当然です。
臨床検査技師として医療機関に勤め続ける以上、年収1000万円はおろか、30代で年収500万円を突破することさえ難しいでしょう。
臨床検査技師が年収1000万円を達成するロードマップ
臨床検査技師の資格を活かして年収1,000万円を目指すには大きく3つのルートが考えられます。
- ルート1:臨床開発(治験関連)
- 治験施設支援機構(SMO)の治験コーディネーター(CRC)
- 日系開発業務受託機構(CRO)の臨床開発モニター(CRA)
- 外資系CROのCRA
- ルート2:医療機器メーカー
- 大手医療機器メーカーのアプリケーションスペシャリスト(ASP)
- 大手医療機器メーカーのマネージャー職、又は外資系ベンチャー企業のASP
- ルート3:製薬メーカー
- 一般用医薬品メーカーのメディカルアフェアーズ
- 日系医療用医薬品メーカーのメディカルアフェアーズ
- 外資系医療用医薬品メーカーのメディカルアフェアーズ
ルート1:臨床開発(治験関連)
臨床検査技師から治験施設支援機構(SMO)の治験コーディネーター(CRC)に転職して臨床開発の経験を積み、日系臨床開発業務受託機構(CRO)の臨床開発モニター(CRA)に転職してキャリアを積むことで最終的に外資系CROに転職して年収1,000万円を達成するルートです。
Step1:脱出期(想定年収〜550万円)
まずは臨床検査技師を辞めて臨床開発業界へ転職しましょう。
臨床検査技師から転職できる臨床開発関連の企業は以下の2つ。
治験施設支援機構(SMO)
開発業務受託機構(CRO)
SMOは治験コーディネーター(CRC)が所属する機関、CROは臨床開発モニター(CRA)が所属する機関です。
臨床検査技師からCROへ転職するルートもありますが、業界未経験者がCROに入社するのは狭き門。転職のハードルが高いためあまりおすすめしません。
一方、SMOなら臨床検査技師の資格や経験を優遇してくれるため採用されるハードルがグッと下がります。
SMOの求人は年中出ているためいつでも応募・挑戦ができますが、CROの求人はSMOより若干少なめ。
CRCの業務内容や臨床検査技師から転職するメリット・デメリットは臨床検査技師から企業へ転職!年収500万円超のおすすめの他職種を解説で詳しく説明しているので、興味がある方はチェックしてみてください。
Step2:キャリアアップ期(想定年収550万円〜700万円)
CRCに転職して臨床開発業界の流れ・業務内容が把握できたら、キャリアアップのために開発業務受託機構(CRO)の臨床開発モニター(CRA)に転職しましょう。
- 治験実施施設の選定・打診
- 試薬会社から依頼された治験を実施する施設を選定
- 該当施設の該当診療科の医長・部長に治験実施を打診する
- 治験実施施設との契約手続き
- 病院の治験事務局・倫理審査委員会(IRB)に治験実施に必要な書類を提出する
- 提出書類を基に病院事務局・倫理審査委員会(IRB)が治験実施の可否を審査し、承認されれば治験実施が確定する
- 治験モニタリング業務
- 治験を円滑に進めるために、CRCと協働して治験の進捗管理を実施する
- 治験プロトコルからの逸脱の有無をチェックして、逸脱が見つかった場合は適切な対応(治験中断・中止・継続)をCRCに指示する。
- 治験報告書の作成・確認
- 治験実施中に被験者から収集したデータの入力フォーム(症例報告書:CRF)を作成
- CRCが収集・入力したCRFの内容に不備がないかを確認して、不備があればCRCに修正依頼する
- CRFの入力内容と診療記録の内容に矛盾がないことを定期的に確認する(直接閲覧:SDV)。矛盾が見つかればCRFの修正や矛盾記録(診療録とCRFの内容の矛盾を説明するnote)を作成する。
- 治験終了手続き
- 全症例のCRFの確定
- 治験終了報告書の作成補助
- 治験事務局・IRBへの終了報告書の提出
Step3:年収1,000万円期(想定年収1,000万円以上)
日系CROでCRAとしての経験を十分に積めば、いよいよ年収1,000万円が見えてきます。この段階まで到達すれば、あとはタイミングと転職活動の手法の問題で1,000万円は達成できます。
アプリケーションスペシャリストになるには?未経験から転職する極意でも解説している通り、ヘルスケア業界の優良求人は人気が高く、公開後すぐにクローズすることもよくあります。このような優良・レア求人に応募するためにも、常に転職市場に身を置き続けて求人情報をモニタリングしておく必要があります。
また、ヘルスケア企業の求人は高年収案件が多く、様々な転職エージェント間で争奪戦状態。つまり、転職エージェントを利用しなければ高年収求人への挑戦権すら得られないのが現状です。
ヘルスケア業界に強い
ハイクラス人材特化
外資に強い
両面型
ヘルスケア業界の年収1,000万円求人に応募するなら上記4つの条件が揃った転職エージェントの利用は必須。
選択を間違えると横流し・キャリアダウンの転職になる可能性が高いので、転職エージェントの選定は入念に行ってください。
ルート2:医療機器メーカー
2つ目のルートは医療機器メーカーに転職して年収1,000万円を稼ぐ方法。
医療機器メーカーには複数の職種が存在しますが、臨床検査技師から転職できるのは営業またはアプリケーションスペシャリストのどちらか。
営業は危険!臨床検査技師が狙うべき医療機器メーカーの職種と業務内容を解説で詳しく紹介していますが、営業は誰でも(国家資格を持たなくても)なれる職種、かつ社内にライバルが多い職種なので、臨床検査技師からの転職はおすすめできせん。
Step1:脱出期(想定年収〜550万円)
まずは臨床検査技師を辞めて医療機器メーカーへ転職しましょう。
なぜなら、医療機器メーカーが中途社員に求めることは即戦力だからです。
アプリケーションスペシャリストになるには?未経験から転職する極意でも解説していますが、アプリケーションスペシャリストの求人が出るのは下記のどちらかのタイミング。
事業を拡大する時
欠員が出た時
脱出期(未経験)で転職できる医療機器メーカーは既に全国展開しており、市場のシェアが安定している成熟企業なので、事業拡大に伴う求人が募集されることは基本的にはありません。
となると、求人が募集される理由は急な退職者が発生したことによる欠員補充のため。欠員が出たチームの他メンバーの負荷を早期に軽減することを目的とした求人募集なので、即戦力となる人材を採用したいのは至極真っ当です。
その業界に対する知見・理解がある
その業界の医療機器の取扱経験がある
検査機器メーカーのアプリケーションスペシャリストの業務内容や臨床検査技師から転職するメリット・デメリットは臨床検査技師から企業へ転職!年収500万円超のおすすめの他職種を解説で詳しく説明しているので、興味がある方はチェックしてみてください。
Step2:キャリアアップ期(想定年収550万円〜700万円)
アプリケーションスペシャリストは稼げる?医療機器メーカーの年収の決め方を解説で説明している通り、医療機器メーカーは医療機関のような年功序列ではなく、成果に応じて適切な報酬が支払われる成果主義です。
毎年の人事評価の結果が優秀なら、年収はうなぎ登り。5年も勤めれば残業代なしで年収700〜800万円程度は軽く達成できます。
もちろん人事評価の結果が悪ければ年収が下がる可能性もありますが、評価の結果を高めるポイントさえ抑えておけばまず年収がダウンすることはありません。
成果主義の企業とはいえ、ここは日本。海外のように100%実力で評価されるということはまずありません。
実力や努力も大切ですが、評価を高めたいなら評価者、つまり直属の上司の言うことを忠実に聞くことが最も手っ取り早い方法です。
年収を上げるための修行だと思って、上司からの指示には忠実に従ってください。
Step3:年収1,000万円期(想定年収1,000万円以上)
大手医療機器メーカーの場合、フィールドプレーヤーは死ぬほど残業をしてもせいぜい年収900万円程度、1,000万円の壁は突破できません。
年収1,000万円の壁を突破するためには、以下のどちらかを選択する必要があります。
マネージャーを目指す
経験者として他社に転職する
大手医療機器メーカーのマネージャー職になれば年収は1,000万円を超えます。
アプリケーションスペシャリストのキャリアパス・キャリアプランを解説で説明している通り、アプリケーションスペシャリストは一般社員として入社後、サブリーダー>リーダー>マネージャーと順にステップアップしていきます。
メリット
年収が1,000万円を超えること、フィールドに出て業務をする頻度が少なくなるメリットがあります。今の時代、テレワーク可の企業が圧倒的に多いため、うまくスケジュールを管理すれば1日中自宅で仕事をすることもできます。
デメリット
多くの会議への参加、マネージメント業務の発生、部下のフォロー業務など、自分以外の人間と関わる業務が増加するためスケジュールのコントロールが難しくなります。
研究機関や臨床医をターゲットにした製品を扱う外資系ベンチャー企業に転職すると、フィールドプレーヤーのまま年収1,000万円を達成できる可能性があります。研究機関や臨床医をターゲットにした製品は単価が高いため、社員の年収レンジのベースが大手医療機器メーカーよりも圧倒的に高くなります。
メリット
マネージメント業務不要で年収1,000万円を達成できる、顧客の質が高く余計なトラブルに巻き込まれにくいなどのメリットがあります。
デメリット
入社の難易度が非常に高い、外資系ベンチャーは英語が必須、社員数が少なく全国各地への出張ベースでの業務頻度が高いなどのデメリットがあります。
【高年収で働きやすい!?】外資系ベンチャー企業の全貌を紹介で解説しているので、興味がある方はチェックしてみてください。
外資系ベンチャー企業の詳細はなお、外資系ベンチャー医療機器メーカー求人は外資に強い大手転職エージェントしか扱っていないことがほとんどです。
ルート3:製薬メーカー
臨床検査技師からメディカルアフェアーズ(MA)として製薬企業に転職してキャリアを積む方法です。
MAの業務内容や転職するメリット・デメリットは臨床検査技師から企業へ転職!年収500万円超のおすすめの他職種を解説で説明しているので、興味がある方はチェックしてみてください。
薬剤師が優遇される職種とはいえ、企業が求めている経験・スキルを持っていれば採用してもらえる可能性もゼロではありません。
理系修士以上の資格保持者
募集領域の疾患に対する知識
英語・日本語論文の読解力
中級以上の英語力
また、日系医薬品メーカーのMAは薬剤師からの人気がそこまで高くないため、応募が集まらず、応募条件が緩和されることがあります。
応募条件の緩和は自社の求人を扱う転職エージェントに内々で知らされることが多いため、MA求人を扱う転職エージェントへの登録は必須です。
まとめ:臨床検査技師から脱出すれば年収1,000万円のチャンスは転がっています
臨床検査技師を辞めて企業に転職しても必ず年収が1,000万円に到達するとは言い切れません。むしろ、多くの転職者が年収600万円〜700万円で頭打ちになるでしょう。
とはいえ、医療機関で臨床検査技師として勤める限り、年収が1,000万円に到達することは絶対にあり得ないと断言します。
今の待遇に満足していない
上司のようになりたくない
仕事が面白くない・つまらない
このように悶々とした日々を過ごされているなら、人生に『転職』という新しい風を吹き込んでみてください。
きっと明るい未来が開けますので。
『脱出期』で紹介した3つの職種(CRC、ASP、MA)の業務内容や転職のメリット・デメリットは下記の記事で詳細に解説しています。