医療の国家資格である臨床検査技師は”安定”しているから、今の待遇に不満を抱えていてもリスクが生じる”転職”にはなかなか踏み切れない。
安定とは安く定まること。リスクに目をつぶって、安い給料にかまけること。リストラされる心配はありませんが、奴隷のように働かされ続け、医療機関に飼い殺しにされることを意味します。
こんな話を耳にした私は、飼い殺されること自体がリスクだと思い、年収アップ・待遇改善・やりがいを感じれる職に就くために転職することを決意しました。
胚培養士、治験コーディネーター、医療機器メーカー、研究開発職と複数回の転職を経て、臨床検査技師時代の年収(350万円)を遥かに凌駕する年収(750万円)が手に入りました。

なお、現職での残業時間は月10時間程度、土日祝休み、夜勤なし、職場は自宅から自転車で5分。
臨床検査技師を辞めて後悔したことはなく、転職して本当に良かったと感じています。
この記事では、転職を考えている臨床検査技師に向けて、私の人生を対価に手に入れた転職ノウハウを全て公開しています。
組織は”支持される側”7割、”支持する側”3割で成り立っています。
本記事を参考にして、ぜひ検査室の外の世界に羽ばたいてください。
臨床検査技師のキャリアチェンジ戦略は『軸ずらし転職』
臨床検査技師のキャリアチェンジ転職には2つのメリットがあります。
年収がアップする
競争率が高い職に就ける
臨床検査技師がキャリアチェンジする鉄則は「軸ずらし転職」です。
「軸ずらし転職」とは業界・職種のどちらかだけを変える転職
軸ずらし転職とは下図のように、業界または職種だけを転職で変える手法です。
軸ずらし転職は、あなたの「強みや経験」を職種・業界のどちらかに残しながら活躍の場をズラしていくため、未経験者扱いされることが無くキャリアダウンの転職にはなりません。
続いて私の実例。下図のピンク色の矢印が私のキャリアです。

キャリアチェンジ転職で絶対にしてはいけない2つのこと
W未経験
キャリアアップ転職が目的なら、W未経験(業界・職種の両方が未経験)は絶対に避けるべきです。
あなたの年齢が20代後半なら、その選択は悪手と言わざるを得ません。転職する際は、右上に進み続けることをオススメします。
年収がダウンする希望職種への転職
転職後はあなたの希望通りに事が進むとは限りません。
例えば、未経験のエコー検査をやりたいがために他の医療機関に転職したと仮定します。臨地実習や学内実習でプローブを握った程度の経験は到底経験者とはいえないため、エコー未経験者として現職と同等、またはやや低い年収で採用されます。病院規模にもよりますが、20〜30名程度の小・中規模の検査室であればエコー検査以外の検査業務も担当することになるため、エコー検査に割ける時間は限られます。エコー検査は毎日予約でいっぱい。所見の記載のために毎日残業続き。
つまり、戦力外のエコー初心者が日常検査に入る余地はなく、他業務の兼ね合いでいつまで経っても技術が高まらない状態が続き、結果的にエコー検査から外されることが想定できます。
上図には記載していませんが、私は胚培養士になるために臨床検査技師を辞めました。日本臨床自動化学会に参加して、たまたま聞いた胚培養士の発表に感銘を受けたからです。実際に年収ダウンを条件に不妊治療クリニックに転職できましたが、業務内容・人間関係が合わず、わずか6ヶ月で退職せざるを得なくなりました。
臨床検査技師からキャリアチェンジできる他職種
私は、臨床検査技師には医療業界で職種だけを変える転職をオススメします。
理由は2つあります。
自身の成功体験があるため誰でも再現できる
私の最終学歴は3年制の専門学校です。博士・修士はもちろん、学位すら取っていない、ザ・凡人です。加えて、論文投稿の経験なし、英語は読めない・書けない、マネージメント経験なし。こんな私でも、研究開発職に就いて、昨年の年収は750万円でした。
キャリアアップには特別な才能や学歴は必要ありません。タイミングとハートが揃えば誰もが達成できます。
臨床検査技師は知名度が低く専門性が高すぎるため医療業界以外では適正な評価が受けられない
患者様(世間)の臨床検査技師の知名度は掃除の人より少ないことをご存知でしょうか。他の医療職の知名度が半数程度に対して臨床検査技師は25.7%。世間の4人に1人しか知らない職種、それが臨床検査技師です。
臨床検査技師と名乗って「頭よさそう〜」って言われた経験はありませんか。それは、聞いた事がない職種で具体的にイメージが湧かず、漢字6文字という名称の難しさから連想されているに過ぎません。
医療業界、引いては検査業界なら市場価値を適正に評価できたとしても、他業界では職種の存在自体が認知されていないため、適正な評価を受けられるハズがありません。
臨床検査技師のキャリアチェンジできる他職種は医療系専門職です。
- 治験コーディネーター@治験施設支援機構
- アプリケーションスペシャリスト@検査機器・試薬メーカー
- 研究開発職@中小企業
- 臨床開発モニター@開発業務受託機構
- メディカル・サイエンス・リエゾン@製薬メーカー
- メディカルアフェアーズ@製薬メーカー
各職種の業務内容や向き・不向き、やりがいは下記記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。

具体的なキャリアチェンジ転職戦略
Step1職務経歴書の作成
職務経歴書(しょくむけいれきしょ)は、当人が過去に従事した職務・職業上の地位、および当該職務の具体的内容を、当人の職歴として時系列的(編年体)またはキャリア(経験)、プロジェクトタイプなどをベースに記載した書面のことで、第三者に提示するために使用され、時として履歴書とともに(履歴書の補完的に)使用される。
出典:Wikipedia
職務経歴書を転職活動開始前に作成すべき理由は3つあります。
自身のキャリアや強みを言語化して理解を深める
求人先・転職エージェントの興味を引いて紹介求人数のNを稼ぐ
転職エージェントの添削はあってないようなもの
転職エージェントは単語の使い方や言い回しなど最低限のレベルは修正してくれますが、あなたのことを詳しく知らないし医療業界の専門家でもないため、コンテンツのクオリティを高めてくれることは期待できません。
また、職務経歴書の内容をマイページにアップロードできる転職サイトでは、内容が充実している程、転職エージェントや企業からスカウトが多く届く傾向があります。
Step2キャリアチェンジできる職種を紹介してくれるハイクラス転職エージェントを利用する
転職エージェントには下記の2種類があります。
メリット | デメリット | |
ミドルクラス |
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ハイクラス |
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※横にスクロールできます。
ミドルクラス転職エージェントは薄利多売。年収が低い求人を多くの求職者にバラまくため提案数こそ多いですがサポートの質はイマイチです。
対して、ハイクラス転職エージェントは高利商売。高年収の求人を限られた人材だけに紹介するためサポートの質はミドルクラスと比にならないほど高いです。
臨床検査技師のキャリアアップ転職でオススメの医療系専門職は年収が最低でも500万円とかなりの高年収。ほぼ間違いなくハイクラス転職エージェントが扱っています。
臨床検査技師のキャリアチェンジ転職にオススメの転職サイトは下記記事で解説しているので参考にしてください。
https://rinten-sup.com/5-recommended-recruitment-agents-for-clinical-laboratory-technicians/
Step3有料の転職サイトを利用する
転職サイトには無料と有料がありますが、医療系専門職の求人は無料の転職サイトには掲載されません。人気が集中して応募が殺到することを防ぐためです。
また、身銭を切る有料の転職サイト利用者と比べて無料の転職サイト利用者は転職意欲が低いと判断されやすいことも無料の転職サイトに求人を掲載しない理由のひとつです。
有料の転職サイトは月額利用料金が3~5千円程度発生しますが、どの求人も無料の転職サイトでは出会えないハイレベルなものばかり。
Step4自施設に出入りする業者(メーカー)に転職を相談する
転職活動における最強のチートは『社員からの紹介』です。ここだけの話ですが、社員の紹介で求人に応募すると評価者の採点が甘くなるため、通常の採用ルートと比べると採用難易度が格段に下がります。
あなたの施設にも定期的に検査機器メーカー、検査試薬メーカーの営業、学術が訪問していると思います。関係性を構築できているなら、勇気を出して『求人って募集してたりしませんか?』と尋ねてみてください。
ハイクラス企業への転職前に習得すべき2つのスキル
トリプルシンキング:3つの思考力
トリプルシンキングとは下記3つのを合わせた思考力の総称です。
思考力 | 説明 |
クリティカルシンキング | 「本当にこれで良いのか?」と前提を疑う思考法。前例踏襲や慣例に対して疑問を投げかけることから始まる。 |
ラテラルシンキング | 事象を多面的に捉え、自由な発想でアイデアを生み出す思考法。投げかけた疑問に対し、新たな視点で解決策を見つける。 |
ロジカルシンキング | 主張と根拠を論理的に説明する思考法。状況証拠に基づいて新たなアイデアを提案し問題解決に導く。 |
ハイレベル企業は小手先のテクニックよりも、思考力の高さを重視する傾向が強いです。製品の知識は入社後にいくらでも習得できますが、思考力はそう簡単には鍛えられないからです。
また、ハイレベル企業は指示待ち人間は求めておらず、自らで考えて行動できるクリエイティブな人材を求めています。
ちなみに、思考力の高さは会話すればある程度評価できます。頭が良いように振る舞っていても、思考の浅さは言葉の端々に滲み出るので、付け焼き刃の対策は何の意味もなさないことには注意が必要です。
- 常に嘘をつく『嘘つき族』
- 常に本当のことを言う『正直族』
下記4人の中から誰が嘘つき族で誰が正直族かを当ててください。
※カンではなく順序立てて考えると答えに辿り着きます。

1つずつ推論(仮定)しながら消していくと必ず矛盾が生じます。
嘘つき族はBさんです。
Bさんが嘘をついていると仮定すると他の3名の発言に矛盾は生じません。
- Aさん:正直族(矛盾なし)
- Cさん:Bさんは嘘つき族(矛盾なし)
- Dさん:Aさんは正直族(矛盾なし)
プレゼンテーションスキル
ハイクラス企業に入社すると社内・社外問わずプレゼンする機会が増えます。
なお、臨床検査技師の学会のように、文字が多いスライドを表示しながら手元のカンペを読み上げて一方的に情報を提供して終わるだけのプレゼンは0点です。聴衆の興味を惹いてプレゼンターの想いを理解してもらい、最終的に相手から「Yes」を引き出せるプレゼンが評価されるプレゼンです。
プレゼンスキルは独学での勉強や場数を踏むだけでは上達しません。適切な方法で勉強すればだれもが必ず上達できます。
プレゼンが死ぬほど苦手だった私が、職場で一番プレゼンが上手いとまで言われるようになるために読破した書籍は下記記事で紹介しているので参考にしてください。

転職の失敗回避の心得
30代の男女203人が転職で失敗したことの1位・2位は事前の情報収集不足に起因していました。
転職は情報戦。情報過多の今の時代に正確で自分が欲しい情報を手に入れることが転職成功の鍵です。
成功者のマネをする
転職サイトの選択を間違えて後悔するなど絶対にあってはなりませんが、どれが正解なのかが登録時には分からないのも事実。
転職を含め、新たなことに挑戦する・なにかの行動を起こすときは”先を行く成功者の真似をしろ”という意見があります。
自分とスペック・性質が似ている成功者のマネをすれば、成功できる確率は間違いなく上がります。
求人先の口コミ・評判を自ら調べる
転職サイトや転職エージェントなどの人材紹介サービスは求人企業と利害関係があるため、受け身で入手できる情報には間違いなく偏りがあります。
受け身で入手できる情報の最たる例は”求人票”。事業内容や仕事内容、就業時間、休日などの勤務条件が詳しく記載されているため、求人企業の全てを知った気になります。
また、転職エージェントや企業人事への質問も正しい回答が得られるとは限りません。企業の人事や外部の人間が現場のリアルを把握できるワケがありません。
現場のリアルを一番知っているのは現場の人間。求人企業の社員から情報を得ることが転職成功には必要不可欠です。
企業の社員から情報を得る方法は下記記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。

転職エージェントのペースにのまれてはいけない
転職エージェントが提案する転職プランは4つあります。
キャリアアップ
キャリア維持
キャリアダウン
キャリア復活
志が高く求職者の利益を最優先に考える転職エージェントはキャリアアップまたはキャリア維持の転職プランを優先的に提案しますが、自社の利益重視の転職エージェントは平気でキャリアダウンの転職プランを提案してきます。
転職エージェントが最も儲かるスキームは、キャリアダウンの転職を高速回転させること。
- 今より仕事が楽になりますよ
- 確実に職場環境を変えれますよ
- 幹部候補ポジションなので将来的には年収が上がりますよ
どんな口実であれ、キャリアダウンの転職を提案してくる転職エージェントは信用すべきではありません。
段階を踏んだキャリアチェンジも考慮する
職種が変わる転職よりも同じ職種の転職の方がはるかにハードルは低いです。

私はピンク色の矢印でキャリアアップできましたが、転職期間が長期化するなら黒色の矢印でキャリアアップすることも考慮すべきです。
転職活動前の臨床検査技師が自覚すべき注意点
臨床検査業界の見通しは暗い
臨床検査技師をこのまま続けていたら間違いなく後悔します。なぜならこの先、臨床検査技師を待ち受ける闇が深すぎるから。
人の命を預かり知識も技術も経験も必要な仕事なのに、診療報酬の元で働く限り給料は上がらないのが臨床検査技師の未来です。
臨床検査技師の将来性の詳細は下記記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。

臨床検査技師へのメーカー評価はかなり低い
メーカーからの臨床検査技師に対する評価はこの動画の内容に似ています。
今から18年前日本テレビで放送されたドラマ「女王の教室」のワンシーン。今なら放送禁止になってそう。 pic.twitter.com/qr5ox3pDFT
— 猫報道 (@world_buzz_news) January 8, 2023
同じルートで病院と家を往復するだけの毎日
同じ顔ぶれで決められた範囲内の業務を何の疑問も抱かず思考停止状態で繰り返すだけの日々
裏では後輩・同僚・上司・組織への不満を漏らしているのに自らは誰に意見することもなく、波風を立てずに平穏に過ごそうとする変化を嫌う姿勢
検査のプロフェッショナルと呼ばれる臨床検査技師ですが、検査を取り上げると何も残らない人がほとんどです。とはいえ、今まで検査しか携わっていないのだから、それは仕方がないこと。メーカー側もその前提で医療従事者を採用します。
重要なのは、検査を取り上げられると何も残らないという事実を認めて謙虚になること。間違ってもエンドユーザーはメーカーより偉い・私は検査のプロだ、などと強気にならないでください。
医療機関は指示待ち傾向のYESマンを育てる場所
臨床検査技師がキャリアアップ転職を達成するには一般企業への転職を視野に入れる必要がありますが、一般企業と医療機関では働き方まるで違うことには注意が必要です。
医療機関は人の命を預かる場所であり指揮系統の乱れは絶対に許されません。そのため、必ず上から指示が降ります。この指示に対して”No”の選択肢はなく、指示通りに業務を遂行することが医療機関における評価に繋がります。結果的に、従業員は自らで考えて行動する能力を失い、指示待ち傾向が強い人材が育ちます。
一方、一般企業(特に外資系)は変化する競争社会を勝ち抜くため社員に自発的な行動や挑戦を求めることが多く、イノベーティブな発想が乏しい指示待ち傾向の強いYESマンへの評価は著しく低いです。
あなたの部署に新卒採用者が配属された時、『最近の若い子はマナーがなってない』と感じたことはありませんか。医療機関勤めの感覚で一般企業に転職すると、同じように思われる可能性があるので、言動には特に注意してください。
【FAQ 】臨床検査技師から他職種(企業)への転職で有利になること

Q1.研究実績や学会発表を多く行っている方がキャリアチェンジ転職では有利ですか?
A.研究や学会発表の実績は確実にプラスになります。なぜなら、定時で帰ることで頭がいっぱいの臨床検査技師は、研究や学会発表に消極的だから。ただし、研究や学会発表の実績は足切り基準に過ぎず、実績が多ければ必ず採用されるワケではありません。
Q2.臨床検査技師の転職は何年目から許されますか?キャリアが長いほど有利で年齢が若ければ不利ですか?
A.臨床検査技師の転職成功は実務経験年数ではなく素質の高さと関係します。素質が高ければ1年目・2年目の20代、30代でも転職できますが、素質が低ければ10年目・20年目の40代、50代でも転職はできません。
”素質の高さ”とは”地頭が良さ”とも言い換えられます。
- 理論的で説明がわかりやすく、会話が上手い
- 情報処理能力が高く、頭の回転が早い
- 理解力が優れておりお、すぐに本質を見抜ける
- 洞察力が優れている
- 日頃から思考する癖や習慣がある
上記に該当する項目が多ければ、若年者でも転職できます。反対に、40代・50代のベテラン技師でも上記の能力が欠落していると判断されれば転職は失敗します。
まとめ:幸運を掴んで転職を成功させましょう!
今回はキャリアチェンジ転職の達成方法を具体的に解説しましたが、待遇(ワークライフバランス)改善の転職にも応用できます。
どのような目的であれ転職には必ずリスクがありますが、適切な方法で準備を進めれば失敗する確率は限りなくゼロに近づくでしょう。
幸運は、チャンスと準備が一致したときに実現するといわれています。
チャンスを掴んでも準備が整っていなければ幸運は訪れません。
準備が整っていてもチャンスを掴めなければ幸運は訪れません。
準備 | チャンスを掴む |
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ぜひ、幸運を掴んで転職を成功させてください。
https://rinten-sup.com/5-recommended-recruitment-agents-for-clinical-laboratory-technicians/