私は26歳で、私立大学卒の臨床検査技師です。 現在オンコールありの総合病院で働いていて年収は380万くらいです… やっていることは、メインは腹部エコーで、頸動脈、甲状腺などもまぁまぁやっていて、乳腺はかじった程度です。 乳腺と心エコーはメインはドクターがしているので、私はしていません。(頼んだら教えてもらえる可能性はある) 他の生理機能検査や検体検査なども一通りはできます。(ローテンションで回ってくる)
年収アップのためにエコー検査を希望する方もいますが、これが現実です。
認定技師は国家資格ではないため、取得しても年収の大幅アップは期待できません。
そもそも医療法人は医療法第54条で非営利性を求められており、昇給は人事規定で決められた給与テーブルに従います。
給与テーブルは医療機関ごとに異なるため一律ではありませんが、臨床検査技師の平均年収を見れば大体分かります。

【令和3年】臨床検査技師の平均年収
支給額
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20-24歳 | 337万円 | 336万円 |
25-29歳 | 403万円 | 416万円 |
30-34歳 | 459万円 | 424万円 |
35-39歳 | 519万円 | 473万円 |
40-44歳 | 576万円 | 491万円 |
45-49歳 | 721万円 | 513万円 |
50-54歳 | 740万円 | 571万円 |
55-59歳 | 707万円 | 549万円 |
手取り
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20-24歳 | 270万円 | 268万円 |
25-29歳 | 322万円 | 332万円 |
30-34歳 | 367万円 | 339万円 |
35-39歳 | 415万円 | 378万円 |
40-44歳 | 460万円 | 392万円 |
45-49歳 | 576万円 | 410万円 |
50-54歳 | 592万円 | 456万円 |
55-59歳 | 565万円 | 439万円 |
出典:厚生労働相「令和3年賃金構造基本統計調査」結果を元に算出
月給
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20-24歳 | 16万円 | 16万円 |
25-29歳 | 19万円 | 20万円 |
30-34歳 | 22万円 | 20万円 |
35-39歳 | 24万円 | 22万円 |
40-44歳 | 27万円 | 23万円 |
45-49歳 | 34万円 | 24万円 |
50-54歳 | 35万円 | 27万円 |
55-59歳 | 33万円 | 26万円 |
出典:厚生労働相「令和3年賃金構造基本統計調査」結果を元に算出
※賞与を年5.0ヶ月分と想定して算出
手取り額が月30万円を超えるのは男性の40代後半以降です。20代・30代の手取りでは結婚しても子供・マイホームは諦めるしかありません。
ちなみに、女性より男性の方が給料が多い理由は「当直・オンコール」対応分の待機手当・当直手当が支給されているから。
医療機関は年収アップが期待できない理由
その理由は、右肩上がりの医療費・保険料と診療報酬のマイナス改定で説明できます。
右肩上がりの医療費と保険料
下図にお示しした通り、1995年以降、主要な先進国の中で唯一日本だけが平均賃金が横ばいやや低下傾向です。
アメリカで、日本語がわかると給料が減ります。英語のみの仕事と、日本語と英語が堪能なことを求められる仕事を比べると、後者のほうが給料半額でしかも責任も倍以上のことが多い。
— Tak 🇺🇸 (@Tak31860856) March 21, 2022
この理由は下記ツイートに。
日本企業が英語が少し苦手で現地企業にいくのは怖いなぁという人を囲い込んで激安で買い叩いているからです。そして労働環境も圧倒的にたぶん悪いです。仕事の内容も多岐に渡りすぎて超人を求めています
— Tak 🇺🇸 (@Tak31860856) March 21, 2022
日本人の給料が上がらない一方で、ひたすら右肩上がりなのが国民医療費。

医療技術の高度化や高齢者の増加が国民医療費が上がり続ける主な要因と言われています、医療にかかる財源は有限。
誰かが何かしらの形で負担することになりますが、その1つがあなたの給料から毎月天引きされている健康保険料。
日本の国民医療費の48.8%は被保険者の保険料から捻出されていますが、医療費が増加すると必然的にあなたの給料から天引きされる健康保険料の金額も増加します。
下図の緑の棒グラフは1人あたりの年間保険料負担額を示していますが、年々右肩上がりで増加していることが分ります。
日本人の給料は上がらない
給料から天引きされる健康保険料は毎年増える
これだけなら国内の内資系企業でも同じことが言えますが、問題はここから。
診療報酬のマイナス改定
健康保険料増大に伴う国民の負担を軽減するために、政府は診療報酬のマイナス改定を検討しています。
給料から天引きされる健康保険料の金額を抑えられる
医療機関受診時の患者負担が減少する
診療報酬のマイナス改定により給料から天引きされる健康保険料の金額が安く抑えられるため、多くの国民の手取りが増える一方で、心中穏やかではないのが医療関係者。
診療報酬がマイナス改定されれば医療の報酬単価が下がるため、医療機関の収入に影響が出るのは言うまでもありません。
もちろん、高齢者増加に伴い患者数も増えるため、下がった単価は患者数の増加でカバーできる部分もありますが、それは今と同じ給料で今より忙しくなることを意味しています。
その他にも、タスクシフトで医師の業務をコメディカルが受け継ぐ施策が進んでいますが、これは医師の業務量を減らして病院の支出を抑えることが最大の目的。
超高齢化社会に突入中の日本では、今後も患者数が増大することは明らかです。
実は年収が上がらない最大の理由は『医療機関で勤務しているから』に他なりません。
年収をアップさせたいなら企業への転職も視野に入れるべきです。
臨床検査技師が年収をアップする方法
臨床検査技師として医療機関に勤め続ける以上、残業手当に期待できません。当直に入れる回数にも限りがあります。
20代・30代の若い世代で年収を大幅にアップさせたいなら、企業で働くことを強く推奨します。
企業入社後の年収推移(職種別)
論より証拠ということで、私のこれまでの年収推移を職種別にお示しします。
年代 | 職種 | 年収(最大) | 同年代男性臨床検査技師の年収 |
---|---|---|---|
20-24歳 | 臨床検査技師 | 390万円 | 337万円 |
25歳 | 胚培養士 | 400万円 | 403万円 |
26-29歳 | CRC | 500万円 | 403万円 |
30-32歳 | アプリケーションスペシャリスト | 700万円 | 459万円 |
32-34歳 | 研究開発 | 750万円 | 459万円 |
企業に入社すれば同年代の臨床検査技師より遥かに多い給料がもらえます。
客観的なデータとして、公的機関の集計結果もご覧ください。

※計算方法:きまって支給する現金支給額×12+年間賞与その他特別給与額
医療機器メーカーの1例ですが、医療系専門職の中で特に高年収といわれる薬剤師よりも年収が多いことが分かります。
企業の年収が医療機関より高くなる理由
企業の方が医療機関より年収が高くなる理由は次の3つです。
企業は営利型法人・医療機関は非営利型法人
医療従事者の業務AI・機械化に伴う価値低減
年功序列ではなく成果主義
企業は営利型法人・医療機関は非営利型法人

医療法人は非営利型法人と呼ばれており、社会貢献を目的に存在しているため利益を従業員に還元する仕組みがありません。
一方、企業は営利型法人と呼ばれ、利益を追求して経済の発展に貢献することが存在意義です。営利型法人は余剰利益を社員に還元することに問題はないため、経営状態が良好な企業で働けば医療法人より多くの給料が支給されます。
医療従事者の業務AI・機械化に伴う価値低減

AI、機械化が進む医療業界の一例現場にとって機械化が進むことは業務負担が減るため喜ばしいことですが、それは同時に医療機器メーカーなどの営利企業に業務(利益)を取られていることを意味します。
今後高齢化社会の進行に伴い医療機関を受診する患者数は増加しますが、AI・機械化により利益は企業に流出。
年功序列ではなく成果主義

年収がアップする仕組みは年功序列型と成果主義型の2種類が存在します。
年功序列型
勤続年数に応じて給料の支払額が決められる仕組み。長く勤める程年収が高くなる。
成果主義型
業績・成果に応じて格付けされる階級(等級)によって給料の支払額が決められる仕組み。
医療機関が年功序列型なのは言うに及びません。
一方、多くの企業は社員の自主性とモチベーションアップを目的として成果主義型を導入しています。また、最近では外資系企業を中心として若手社員に裁量権を与える企業も増えているため、臨床検査技師が30代で年収1,000万円達成も夢じゃありません。
年収を左右する最大の要因は「何をするか」ではなく「どこで働くか」。
企業に転職するデメリット
医療機関勤務と比べた際のデメリットは2つあります。
年収が安定しない
転勤がある
年収が安定しない
医療機関のような年功序列制度は、長く勤めれば段階的に年収が上がることが約束されています。収益で賞与額が多少増減するとはいえ、基本的には一度上がった年収はその後に下がることはありません。
一方、成果主義制度を導入する企業では、下図の通り社員の成績・会社の業績によって毎年年収が大幅に増減する可能性があり、安定しません。

とはいえ、上司から言われたことをきちんとこなしていれば、年収が下がることはまずありません。個人の成績が不調で、かつ企業全体の業績が不振だったとしても、臨床検査技師の年収を下回ることはありません。
転勤がある
成績優秀者は売り上げが大きな支店へ。
成績不調者は打ち上げが小さな地方へ。
このように、サラリーマンに転勤はつきもの。辞令が出ると従う以外の選択肢はありません。転勤頻度に定めはありませんが、早ければ1年、長ければ10年に1度の間隔で辞令が出ます。
ちなみに、転勤先候補は支店の数だけあります。つまり、支店の数が少ない企業に転職すれば転勤頻度は下がります。
なるべく転勤したくない方は、支店の数が少ない企業を狙うと良いです。
臨床検査技師にオススメの企業
業界
臨床検査技師から企業に転職するなら以下の3業界がオススメです。
- メディカル業界
- ライフサイエンス業界
- ヘルスケア業界
上記3業界は臨床検査技師で培った医療の知識を活かせるため、全くの未経験業界への転職に比べるとハードルが下がります。
また、臨床検査技師からの転職者は完全未経験者扱いにならないため、入社時の年収は今と同等以上の金額を提示してもらえます。
職種
臨床検査技師からの転職でオススメの職種は医療系専門職です。
医療系専門職の中でも特にオススメの6職種をご紹介します。
- 治験コーディネーター@治験施設支援機構
- アプリケーションスペシャリスト@検査機器・試薬メーカー
- 研究開発職@中小企業
- 臨床開発モニター@開発業務受託機構
- メディカル・サイエンス・リエゾン@製薬メーカー
- メディカルアフェアーズ@製薬メーカー
治験コーディネーター@治験施設支援機構
治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator:CRC)とは、治験を進めるための各種調整業務・治験データ収集の補助を担う職種です。医療機関の関連部署、製薬会社、医薬品開発業務受託機構(CRO)など、調整先は多岐に渡るため治験を円滑に進めるに必要不可欠な存在です。
アプリケーションスペシャリスト@検査機器・試薬メーカー
アプリケーションスペシャリストとは、医療機器メーカーのカスタマーサポート業務を行う職種です。カスタマーサポートは『装置』と『アプリケーション』に分かれますが、アプリケーションスペシャリストはアプリケーション関連のサポートを専門的に実施します。
研究開発職@中小企業
研究開発とは、研究によって得られた知識・技術を製品として世に出し事業化する職種です。今までにない新しい製品を生み出すイノベーティブな側面が強く、革新的なアイデアを製品化・実用化して自社の利益に貢献することが主なミッションです。
臨床開発モニター@開発業務受託機構
臨床開発モニター(Clinical Research Associate:CRA)とは、医療機関で実施する治験が治験実施計画書に基づいて適切に進められていることを製薬メーカーに代わりモニタリングする職種です。治験実施施設をサポートするCRCと協働して治験を円滑に進めることが主なミッションです。
メディカル・サイエンス・リエゾン@製薬メーカー
メディカル・サイエンス・リエゾン(MSL)とは、医療機関の外部顧客(主に医師)との面談を通して医薬品の情報提供・情報収集を行う職種です。医師に対して医学・科学的なエビデンスや高度な専門知識をもとに医薬品の最新情報を提供し、臨床とのディスカッションを通して育薬に貢献します。
メディカルアフェアーズ@製薬メーカー
メディカルアフェアーズ(MA)とは、製薬メーカーに所属する職種で、医療ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ:アンメットメディカルニーズ)を踏まえたエビデンスの創出・発信・浸透を図るとともに、患者さんや医療関係者に取って有益な情報を提供し、国内外の治療の発展と治療成績向上に貢献することを目的として活動します。MSLやMRが収集してきた情報を元にメディカルプランを作成することがMAの主なミッションです。
これらの職種は、給料と休日が増えることはもちろん、臨床検査技師の経験を応用できて、応募できる求人が多いため、転職難易度が比較的低くオススメです。
臨床検査技師にオススメの転職先の具体的な業務内容や向き不向き、やりがいは下記記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。

求人の探し方
業界・職種が決まれば、あとは転職サイトを利用して該当する求人をチェックします。
求人情報は下記の理由から毎日チェックすることを推奨します。
- あなたの希望条件に合致する求人がいつ出るか分からない
- 条件の良い人気求人は早々にクローズする可能性が高い
転職サイトによっては希望条件に合致する新規求人が掲載されたら通知してくれることもありますが、精度が低く見落とす可能性が高いためオススメしません。
求人情報を毎日チェックするのが面倒な方は
転職エージェントを利用する方法があります。
転職エージェントは転職活動を無料でサポートしてくれる転職支援サービスです。
転職サイトとの違いは下表の通り。
転職エージェント | 転職サイト | |
---|---|---|
求人の数 | 少ない | 多い |
求人の質 | 厳選されている | 変な案件も多く含まれる |
求人の探し方 | 紹介してもらえる | 自分で探す |
企業情報の収集 | 内部事情も教えてもらえる | 公表情報しか入手できない |
応募書類の添削・面接対策 | 協力してくれる | 一人でやる |
日程調整・条件交渉 | 代行してくれる | 一人でやる |
希望条件に合致する求人を精度高くピックアップしてくれるため、自分で求人を探す時間が無い方は積極的に使いたいサービスです。

まとめ:企業なら臨床検査技師でも年収1000万円が目指せます
臨床検査技師は年収1,000万円など程遠い。
これが巷での通説でしたが、営利企業に転職することで達成できる兆しが見えてきました。
働く目的がお金を稼ぐことであれば、医療機関で勤務するのは時間の無駄。年齢が若く、転職市場で有利な今のうちに営利企業に転職してください。
年収アップしたいなら転職先候補は臨床検査技師の経験を活かせて即戦力となり得る下記の業界・業種を目指してください。
業界
- ライフサイエンス
- メディカル
- ヘルスケア
業種
- 治験コーディネーター@治験施設支援機構
- アプリケーションスペシャリスト@検査機器・試薬メーカー
- 研究開発職@中小企業
- 臨床開発モニター@開発業務受託機構
- メディカル・サイエンス・リエゾン@製薬メーカー
- メディカルアフェアーズ@製薬メーカー
