自体験や同僚を見て、臨床検査技師からの転職で成功する人と失敗する人の両方を見てきましたが、失敗する人の多くは転職活動を我流で行なっているという共通点がありました。
転職は他者との相対評価です。どれだけ優れた経歴やスキルを有していても、ライバルとの優位性をアピールできる力がなければ勝ち残ることはできません。
企業が求める人材像を探り、あなたの経歴やスキルを企業の理想像にフィッティングさせる技術が重要です。
企業研究や採用担当にアピールするための職務経歴書の書き方は本記事で解説しているので参考にしてください。
この方法は時間に余裕がある人でなければ実行は難しいです。忙しくて時間が無い方は、転職エージェントに情報収集してもらう方法が効率的です。
臨床検査技師におすすめの転職サイトや転職エージェントは下記の記事で紹介しているので、あなたの目的に応じて最適なサイトを使用してみてください。
臨床検査技師のキャリアチェンジ戦略
軸ずらし転職を意識する
臨床検査技師から他職種にキャリアチェンジする秘訣は軸ずらし転職を意識することです。
「軸ずらし転職」とは業界・職種のどちらかだけを変える転職
軸ずらし転職とは下図のように、業界または職種だけを転職で変える手法です。
軸ずらし転職は、あなたの「強みや経験」を職種・業界のどちらかに残しながら活躍の場をズラすため、即戦力と評価され転職が成功しやすいです。
臨床検査技師は業界固定・職種変更が効率的
なお、上述したのは一般論。臨床検査技師という専門性の高い医療系国家資格保持者であれば、業界は医療・ヘルスケア・ライフサイエンスに固定、職種だけを変更することでより早期にキャリアチェンジを実現できます。
下図は私の実例ですが、ピンク色の矢印が私の実際のキャリアです。業界固定で職種だけを変更したことで、キャリアチェンジの大幅な時間短縮に繋がりました。
そもそも、医療業界の職種は専門性が高すぎるため、他業界に同じ職種が存在しないことは珍しくありません。
働く業界を変えたいなら、同時に職種も変更しなければ達成は難しいでしょう。
臨床検査技師の強みを活かせる業界を選択する
WEB/IT、飲食、アパレル、金融・・・様々な業界がありますが、臨床検査技師の経験を活かしてキャリアチェンジしたいなら下記のいずれからの業界を選択しましょう。
医療業界
医療業界は直接的な医療サービスや治療、病院運営に関連する分野です。最終的な顧客は患者さんで、検査結果の直接的・間接的な提供が主な業務です。
ヘルスケア業界
ヘルスケア業界はより広範で、予防医学、健康管理、保険なども含みます。顧客は一般消費者で、ECサイトで販売されている検査キットや市販の家庭用医療機器の開発が主な業務です。
ライフサイエンス業界
ライフサイエンス業界はこれらに加えて、生物学的研究やバイオテクノロジー、薬学など生命に関する科学技術全般を指します。顧客は研究者で、研究開発用機器の販促が主な業務です。
これらの業界は互いに関連しながらも、医療の直接的提供、健康の維持・管理、生命科学の研究という異なる焦点を持っています。
臨床検査技師の強みを活かせる職種を選択する
臨床検査技師からキャリアチェンジできる医療・ヘルスケア・ライフサイエンス業界の職種には下記のような職種があります。
- MR・DMR
- アプリケーションスペシャリスト・クリニカルスペシャリスト
- メディカルサイエンスリエゾン
- メディカルアフェアーズ
- フィールドエンジニア
- 研究開発職
- 臨床開発モニター
- 検査センター
- 治験コーディネーター
- 胚培養士
- 動物検査センター
- キャリアコンサルタント
これらの職種は採用で臨床検査技師の国家資格保持者が優遇され、臨床検査技師の経験やスキルが活かせる職種のためキャリアチェンジしたい方にはおすすめです。
上記職種の具体的な業務内容や臨床検査技師から転職するメリット・デメリットは下記の記事で詳細に解説しているので職種選びの参考にしてください。
キャリアチェンジ転職で絶対にしてはいけない2つのこと
W未経験
キャリアアップ転職が目的なら、W未経験(業界・職種の両方が未経験)は絶対に避けるべきです。
あなたの年齢が20代後半なら、その選択は悪手と言わざるを得ません。転職する際は、右上に進み続けることをオススメします。
年収がダウンする希望職種への転職
転職後はあなたの希望通りに事が進むとは限りません。
例えば、未経験のエコー検査をやりたいがために他の医療機関に転職したと仮定します。臨地実習や学内実習でプローブを握った程度の経験は到底経験者とはいえないため、エコー未経験者として現職と同等、またはやや低い年収で採用されます。病院規模にもよりますが、20〜30名程度の小・中規模の検査室であればエコー検査以外の検査業務も担当することになるため、エコー検査に割ける時間は限られます。エコー検査は毎日予約でいっぱい。所見の記載のために毎日残業続き。
つまり、戦力外のエコー初心者が日常検査に入る余地はなく、他業務の兼ね合いでいつまで経っても技術が高まらない状態が続き、結果的にエコー検査から外されることが想定できます。
上図には記載していませんが、私は胚培養士になるために臨床検査技師を辞めました。日本臨床自動化学会に参加して、たまたま聞いた胚培養士の発表に感銘を受けたからです。実際に年収ダウンを条件に不妊治療クリニックに転職できましたが、業務内容・人間関係が合わず、わずか6ヶ月で退職せざるを得なくなりました。
具体的なキャリアチェンジ転職戦略
Step1職務経歴書の作成
職務経歴書(しょくむけいれきしょ)は、当人が過去に従事した職務・職業上の地位、および当該職務の具体的内容を、当人の職歴として時系列的(編年体)またはキャリア(経験)、プロジェクトタイプなどをベースに記載した書面のことで、第三者に提示するために使用され、時として履歴書とともに(履歴書の補完的に)使用される。
出典:Wikipedia
職務経歴書を転職活動開始前に作成すべき理由は3つあります。
自身のキャリアや強みを言語化して理解を深める
求人先・転職エージェントの興味を引いて紹介求人数のNを稼ぐ
転職エージェントの添削はあってないようなもの
転職エージェントは単語の使い方や言い回しなど最低限のレベルは修正してくれますが、あなたのことを詳しく知らないし医療業界の専門家でもないため、コンテンツのクオリティを高めてくれることは期待できません。
また、職務経歴書の内容をマイページにアップロードできる転職サイトでは、内容が充実している程、転職エージェントや企業からスカウトが多く届く傾向があります。
Step2キャリアチェンジできる職種を紹介してくれるハイクラス転職エージェントを利用する
転職エージェントには下記の2種類があります。
メリット | デメリット | |
ミドルクラス |
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ハイクラス |
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※横にスクロールできます。
ミドルクラス転職エージェントは薄利多売。年収が低い求人を多くの求職者にバラまくため提案数こそ多いですがサポートの質はイマイチです。
対して、ハイクラス転職エージェントは高利商売。高年収の求人を限られた人材だけに紹介するためサポートの質はミドルクラスと比にならないほど高いです。
臨床検査技師のキャリアアップ転職でオススメの医療系専門職は年収が最低でも500万円とかなりの高年収。ほぼ間違いなくハイクラス転職エージェントが扱っています。
臨床検査技師のキャリアチェンジ転職にオススメの転職サイトは下記記事で解説しているので参考にしてください。
Step3有料の転職サイトを利用する
転職サイトには無料と有料がありますが、医療系専門職の求人は無料の転職サイトには掲載されません。人気が集中して応募が殺到することを防ぐためです。
また、身銭を切る有料の転職サイト利用者と比べて無料の転職サイト利用者は転職意欲が低いと判断されやすいことも無料の転職サイトに求人を掲載しない理由のひとつです。
有料の転職サイトは月額利用料金が3~5千円程度発生しますが、どの求人も無料の転職サイトでは出会えないハイレベルなものばかり。
Step4自施設に出入りする業者(メーカー)に転職を相談する
転職活動における最強のチートは『社員からの紹介』です。ここだけの話ですが、社員の紹介で求人に応募すると評価者の採点が甘くなるため、通常の採用ルートと比べると採用難易度が格段に下がります。
あなたの施設にも定期的に検査機器メーカー、検査試薬メーカーの営業、学術が訪問していると思います。関係性を構築できているなら、勇気を出して『求人って募集してたりしませんか?』と尋ねてみてください。
転職成功への4つのアドバイス
30代の男女203人が転職で失敗したことの1位・2位は事前の情報収集不足に起因していました。
転職は情報戦。情報過多の今の時代に正確で自分が欲しい情報を手に入れることが転職成功の鍵です。
成功者のマネをする
転職サイトの選択を間違えて後悔するなど絶対にあってはなりませんが、どれが正解なのかが登録時には分からないのも事実。
転職を含め、新たなことに挑戦する・なにかの行動を起こすときは”先を行く成功者の真似をしろ”という意見があります。
自分とスペック・性質が似ている成功者のマネをすれば、成功できる確率は間違いなく上がります。
求人先の口コミ・評判を自ら調べる
転職サイトや転職エージェントなどの人材紹介サービスは求人企業と利害関係があるため、受け身で入手できる情報には間違いなく偏りがあります。
受け身で入手できる情報の最たる例は”求人票”。事業内容や仕事内容、就業時間、休日などの勤務条件が詳しく記載されているため、求人企業の全てを知った気になります。
また、転職エージェントや企業人事への質問も正しい回答が得られるとは限りません。企業の人事や外部の人間が現場のリアルを把握できるワケがありません。
現場のリアルを一番知っているのは現場の人間。求人企業の社員から情報を得ることが転職成功には必要不可欠です。
企業の社員から情報を得る方法は下記記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください。
https://rinten-sup.com/information-gathering/
段階を踏んだキャリアチェンジも考慮する
職種が変わる転職よりも同じ職種の転職の方がはるかにハードルは低いです。
私はピンク色の矢印でキャリアアップできましたが、転職期間が長期化するなら黒色の矢印でキャリアアップすることも考慮すべきです。
謙虚さを忘れないようにする
転職成功への鍵は謙虚さにあります。謙虚な姿勢は新しい環境や業務への適応を促し、新たなスキルや知識を習得する機会を拡大します。これにより、価値のある従業員へと成長することができます。
また、謙虚さは職場での信頼関係の構築に不可欠であり、同僚や上司との協力を促進します。さらに、自己の長所と短所を正確に理解し、自己成長のための目標を設定する手助けにもなります。このように、謙虚さは転職において多方面での成功を支える重要な要素です。
【FAQ 】臨床検査技師から他職種(企業)への転職で有利になること
Q1.研究実績や学会発表を多く行っている方がキャリアチェンジ転職では有利ですか?
研究や学会発表の実績は確実にプラスになります。なぜなら、定時で帰ることで頭がいっぱいの臨床検査技師は、研究や学会発表に消極的だから。ただし、研究や学会発表の実績は足切り基準に過ぎず、実績が多ければ必ず採用されるワケではありません。
Q2.臨床検査技師の転職は何年目から許されますか?キャリアが長いほど有利で年齢が若ければ不利ですか?
臨床検査技師の転職成功は実務経験年数ではなく素質の高さと関係します。素質が高ければ1年目・2年目の20代、30代でも転職できますが、素質が低ければ10年目・20年目の40代、50代でも転職はできません。
”素質の高さ”とは”地頭が良さ”とも言い換えられます。
- 理論的で説明がわかりやすく、会話が上手い
- 情報処理能力が高く、頭の回転が早い
- 理解力が優れておりお、すぐに本質を見抜ける
- 洞察力が優れている
- 日頃から思考する癖や習慣がある
上記に該当する項目が多ければ、若年者でも転職できます。反対に、40代・50代のベテラン技師でも上記の能力が欠落していると判断されれば転職は失敗します。
まとめ:幸運を掴んで転職を成功させましょう!
今回はキャリアチェンジ転職の達成方法を具体的に解説しましたが、待遇(ワークライフバランス)改善の転職にも応用できます。
どのような目的であれ転職には必ずリスクがありますが、適切な方法で準備を進めれば失敗する確率は限りなくゼロに近づくでしょう。
幸運は、チャンスと準備が一致したときに実現するといわれています。
チャンスを掴んでも準備が整っていなければ幸運は訪れません。
準備が整っていてもチャンスを掴めなければ幸運は訪れません。
準備 | チャンスを掴む |
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ぜひ、幸運を掴んで転職を成功させてください。