医療職の中で臨床検査技師の年収は思ったより低くないんです。
客観的なデータとして公的機関の集計結果をご覧ください。
それでも臨床検査技師は責任重大な仕事してるのに年収が低いと感じたので、私は臨床検査技師をやめました。
私なりに臨床検査技師の給料が低い理由を徹底的に考察してみたので、今後の進路の参考にしてください。
結論、臨床検査技師の給料に満足していないなら企業に転職するか副業するかのどちらかです。
職場が病院だから
年収は個人の技能や職務内容よりも勤務先の性質が大きく影響します。
臨床検査技師の年収が比較的低い主な理由は、医療機関で働いているためです。医療機関の多くは利益追求を主目的としていないため、ここで働く人々の給与も低めに設定されがちです。
医療機関は社会貢献・臨床経験を積める場所であり、稼ぐ場所ではありません。
以下に、医療機関の年収水準が低い理由と具体的な影響について詳しく説明します。
医療機関の収益性
- 保険診療の制約: 日本の医療制度は公的保険が中心で、診療報酬は政府によって定められています。これにより、医療機関が受け取れる報酬は一定の制限の中で設定されており、特に診療報酬の改定で報酬が減少することもあります。報酬が抑制されることで、医療機関全体の収益性が低下し、それが従業員の賃金に直接的な影響を与えることがあります。
- 運営コストの増加: 医療機関は、最新の医療機器の導入や維持、施設の更新、その他の運営コストが年々増加しています。これらのコスト増加は、医療機関の利益を圧迫し、結果的に労働コストを抑える方向に働くことがあります。労働コストの中でも、特に独占業務を持たない臨床検査技師の賃金に抑制圧力がかかる可能性があります。
- 患者数の変動と収益の不安定性: 経済状況や地域による人口動態、さらには感染症の流行などにより、医療機関を訪れる患者数が変動します。患者数が減少すると収益も低下し、これが賃金に反映されることがあります。
賃金への影響
- 予算制約: 医療機関の収益が限られている場合、人件費に割り当てる予算も限定されるため、賃金が抑制される可能性が高くなります。特に、独占業務を持たない職種は、賃金交渉において有利な立場に立ちにくいことがあります。
- 賃金の見直しの遅れ: 医療機関の収益が低迷すると、賃金の見直しや改善が後回しにされがちです。これは、臨床検査技師のような職種で特に見られる現象です。
医療機関の経済的な状況は、従業員の賃金に直接影響を与えるため、医療機関の収益性が改善されない限り、賃金の低迷は続く可能性があります。
この問題に対処するには、医療機関の運営効率を向上させる、政府による支援策の強化、保険診療の報酬体系の見直し等が求められます。
要するに、医療従事者の給与体系は簡単には変わらないということをご理解ください。
需要と供給のバランスが崩れている
需要に対して供給が多すぎることも臨床検査技師の年収水準を下げる要因の1つと考えます。
年収は責任の重さではなく、需要に対する希少性と連動します。
どれだけ責任が重い仕事をしても、代わりが効くなら高い賃金を払って引き止める必要はありません。
なぜ、供給過多になっているのかを考えてみます。
国家試験合格者と医療機関数の推移
まずは供給について。青色棒グラフの推移を見てみると、少子化と言いながら合格者数は微増していることがわかります。
医療職で安定していること、新型コロナのパンデミックで職種の知名度が上昇したことなどが要因として考えられます。
続いて需要(働く場所の数)を見てみましょう。
2010年に7,587件だった一般病院数は、2019年までの10年間で341も減少し、7,246件となっています。
この背景には、人口減少と高齢化が進む中で、人口減少により救急救命や集中治療といった「急性期」の病床が余剰となる一方で、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者仲間入りを迎える問題(2025年問題)に対し、病床を削減して限りある医療費や医療資源(医師の数や負担など)を有効活用しようという国の方針が考えれます。
また、病院側にとっても、多くの病床を抱えていても高水準の病床稼働率を維持できない限り経営が困難な点も病院数が減少する要因の1つでしょう。
こうした国の方針により、一般病院が減少しそれと共に病床数が減少。一方で、一般診療所は無床の診療所が増加する半面、病床が減少する傾向が続いている。
無床の診療所は当日の検査結果報告の必要性が低い慢性疾患をメインとしているため、検査は外注になることが多いです。
そもそも、検査の院内化は装置の維持費や定期消耗品の購入など、想像以上にコストがかかるものです。小さなクリニックレベルでは外注化する方がよほどコストメリットが出るのは当然です。
検査機器の進歩に伴う作業内容の簡略化
上図はすべての装置が一体となって機能する自動化プラットフォームのイメージ図です。
昨今の検体検査は多くの人手が必要だった用手法時代とは大きく異なり、「人手がかからず高品質な検査が提供できる」仕様に進化しています。
この仕組みを既に導入している医療機関には豊田厚生病院があります。
参考資料:次世代の検査室、若手中心に構築
検査の自動化が進み、専用試薬が普及した今、検体検査に必要な人員は用手法時代の1/10以下になっています。
ところが
業務内容は大幅に簡略化しているにも関わらず、多くの医療機関で検査技師の定員はそれほど減少しておらず、特に大型医療機関にこの傾向が強いです。
これに加えて、専用機専用試薬は管理が容易な反面、コストが高いデメリットがあります。専用試薬は精度管理が簡便でトレーサビリティーも担保されているメリットがある一方で、コスト面だけを見れば痛い出費。
医療機関としては人件費でペイしたいところですが、検査技師の人数が減らないためそうはいきません。
まとめると、検査機器の進歩・医療機関の減少に伴い臨床検査技師が活躍できるフィールドの数が減少しているのに対して、毎年の国家資格取得者は不変のため、需要と供給のバランスが崩れていると考えます。
独占業務がない
それぞれの医療専門職には特定の独占業務や制限された業務があります。これらの業務は、その専門職に対して特定の訓練を受け、資格を有する者だけが行えるものを指します。
- 看護師:
- 看護診断の実施
- 患者の健康状態の評価
- 診療のアシスト(例えば、注射、点滴、傷の処置など)
- 医師の指示に基づく薬の管理や投与
- 薬剤師:
- 処方箋に基づく薬の調剤と患者への薬剤指導
- 薬の相互作用や副作用に関する情報の提供
- 患者の薬物療法の管理と最適化
- 放射線技師:
- 放射線を使用した画像診断(レントゲン、CT、MRIなど)の実施
- 放射線治療の準備と実施
- 患者の放射線への曝露量の管理
- 栄養士:
- 個別の栄養療法の計画と実施
- 疾患や健康状態に応じた食事指導
- 食事に関する教育活動の実施
- 理学療法士:
- 機能障害や疼痛の評価と治療計画の立案
- 疾患や怪我のリハビリテーション
- 患者の運動機能の改善と維持を目指した治療技術の提供
では、臨床検査技師だけが行える独占業務は何があるのかを考えてみましょう。
- 血液学的検査
- 生化学的検査
- 微生物学的検査
- 病理学的検査
- 免疫学的検査
- 遺伝学的検査
- 放射線を用いない画像診断検査(例:超音波診断)
これらの検査業務は臨床検査技師だけが行えるように思うかもしれませんが、実際には臨床検査技師には「独占業務」として法律により定められた特定の業務は存在しません。臨床検査技師が行う検査業務は他の医療職によって実施されることが法律的に禁止されているわけではありません。
法律で明確に臨床検査技師だけが行えると定められている業務がないため、市場におけるその専門性が十分に評価されにくく、結果的に賃金の低さにつながっている可能性が考えられます。
その他、諸手当が脆弱、日当直が少ない、残業代が発生しにくいことなども臨床検査技師の年収水準が低い理由でしょう。
臨床検査技師が年収を高める方法
臨床検査技師が高年収を目指すための条件を満たす方法について具体的に考えてみましょう。
ここでは私の実体験を踏まえ、3つのアプローチを提案します。
企業に転職する
臨床検査技師が年収を高めるには職場を変えることが即効性があり最も効果的です。
医療機関以外で働くと臨床検査技師の年収が上がる可能性があるのは、主に次の理由によります。
異なる経済構造と資金流通
医療機関外の産業、特に製薬会社やバイオテクノロジー企業では、製品開発や技術革新に巨額の投資を行うことが一般的です。これらの企業は特許や新技術、製品の販売から得られる収益が非常に高い場合が多く、結果として従業員への報酬も高く設定される傾向にあります。さらに、民間企業は利益追求を目的としているため、成功に直結する人材には高い報酬を支払うインセンティブが存在します。
高い専門性と技術の評価
医療機関外の職場では、特定の専門技術が直接的な製品開発や研究成果に結びつくため、その技術を持つ臨床検査技師の価値が高く評価されます。例えば、製薬企業やバイオテクノロジーの研究所では、臨床検査技師が持つ生物学的な分析能力や実験技術が直接製品開発に寄与するため、高度な専門知識と技能を持つ人材への報酬がより高くなります。
業界の市場価値
製薬会社やバイオテク企業など、医療機関外で働く業界は一般的に高い収益を上げており、グローバル市場での競争も激しいです。これらの企業は新しい治療法や診断ツールの開発を通じて高い収益を目指しており、その過程で技術力を持つ臨床検査技師への投資(すなわち、高い給料の提供)が行われます。これにより、技術を持つ従業員が高収入を得ることが可能になります。
職務の多様性とキャリアアップの機会
医療機関外での職場では、臨床検査だけでなく、製品開発、品質管理、臨床試験の管理、データ分析など、多岐にわたる職務が存在します。これらの職務は高度なスキルを要求されることが多く、それに応じた報酬が設定されています。また、技術や管理職への昇進も期待できるため、長期的なキャリア形成においても経済的な報酬を得やすくなります。
パフォーマンスに基づく報酬システム
多くの民間企業では、成果や貢献度に基づいた報酬システムを採用しています。臨床検査技師が特定のプロジェクトで顕著な成果を上げた場合、ボーナスや昇給が付与されることが一般的です。これにより、自身のスキルと努力が直接的な報酬に反映されるため、モチベーションの向上とともに収入の増加を見込むことができます。
これらの要因により、医療機関外で働く臨床検査技師は、医療機関内での職に就く場合と比較して、高収入を得る可能性が高まります。
年収水準が高い医療機関に移動する
ISO15189の取得状況、日当直の有無、加算の種類、設備投資の必要性などにより、医療機関ごとの年収は大きく変わります。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した調査では、経営形態別の医師の平均年収がまとめられているので見てみましょう。
経営形態 | 平均年収 |
国立 | 882万4,000円 |
公立 | 1347万1,000円 |
公的 | 1353万4,000円 |
社会保険関係団体 | 1280万7,000円 |
医療法人 | 1443万8,000円 |
個人 | 1414万円 |
学校法人 | 739万5,000円 |
その他の法人 | 1406万4,000円 |
医療法人・個人の年収が高く、国立・学校法人(大学病院)の年収が低いことがわかります。上表はあくまでも医師の年収ですが、臨床検査技師をはじめとした医療スタッフへの還元意識の高さは参考になります。
- 学校法人はなぜ年収が低いのか
- 大学病院では研究や医師育成が主目的であり、利益追求が主な目的ではないため、人件費の予算が限られています。これにより、勤務する医師やスタッフの年収が低く設定されがちです。また、大学病院は医療スタッフの数が多く、予算とスタッフのバランスが取れていないため、個々のスタッフの給料も比較的低めになります。さらに、多くの病院で年功序列の風潮が残っており、資格や実績があっても昇給が難しく、年収が上がりにくい状況が続いています。
臨床検査技師のまま年収をアップしたいなら医療法人・個人クリニックに移動することをおすすめします。
副業する
転職はリスクがあるから避けたい。
このような方はWEB/IT関連の副業がおすすめです。
私が経験した中で比較的稼げた副業を5つご紹介します。
- Web/IT関連の副業
- サイト運営による広告収入
Webライター
スキル販売
ポイ活
せどり
今の時代、個人で副業収入を得ることはかなり難しくなっていますが、上記副業なら月1〜5万円程度の収入は得られます。
副業は職場で禁止されているから難しいと思われている方は、住民税を普通徴収にすることで副業バレのリスクがほぼ無くなります。
臨床検査技師の副業については下記の記事で詳細に解説しているので参考にしてください。
まとめ
臨床検査技師の年収が低い理由を考えてみました。
結論として、臨床検査技師は稼ぐ職種ではなく社会貢献する職種であるため年収が低いと考えました。
とはいえ、医療機関は年功序列なので長く働けばそれなりに年収も高くなりますし、退職金も(今のとろこは)数千万円はいただけます。将来的に得られる賃金は意外と多いかもしれません。
でも、将来じゃなくて今お金が必要なんですよね〜
企業に転職したい方に向けておすすめの転職エージェントを紹介しているので、もしよかったら参考にしてみてくださいませ。