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基準範囲、臨床判断値、パニック値の違いを知ろう

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医療の現場で使用される検査値には、さまざまな種類があります。その中でも、基準範囲臨床判断値、そしてパニック値は混同されやすい用語ですが、それぞれが異なる役割を持っています。この記事では、これらの違いについて解説します。

基準範囲とは?

基準範囲とは、健常者(基準個体)の検査値のうち、95%が含まれる範囲を指します。以前は「正常値」と呼ばれていましたが、範囲内であっても必ずしも健康を保証するものではないため、現在では「基準範囲」という言葉が使われています。

基準範囲は、全国の医療機関で統一されておらず、2019年に「共用基準範囲」として統一されました。これは、全国どこの医療機関でも使える共通の基準範囲です。ただし、医療機関によっては臨床判断値を基準範囲として採用することもあります。

臨床判断値とは?

臨床判断値は、特定の疾患を診断するための目安となる値です。次の3つの区分があります。

診断閾値(カットオフ値)

対象疾患の有無を判定するために設定された値で、感度や特異度を考慮して決定されます。心筋トロポニンや腫瘍マーカーなど、疾患特異性の高い検査に用いられます。

予防医学的閾値

生活習慣病などの発症リスクを評価するために使われます。コホート研究や疫学データに基づいて設定され、将来のリスクを予測するために重要です。

治療閾値

医療介入が必要とされる値です。具体的な治療が必要な状況を示し、主に医療経験に基づいて設定されます。

極異常値(極端値)とパニック値

極異常値とパニック値は、どちらも検査値が極端に異常であることを示しますが、その意味や対応が異なります。

極異常値(極端値)とは?

極異常値とは、基準範囲から大きく外れた値で、通常、統計的に0.5~1.0%の範囲に入る異常な値を指します。ただし、これが患者の病態や疾患に関連するかどうかを確認する必要があります。測定ミスや機器トラブルが原因の場合もあるため、慎重に評価しなければなりません。

パニック値(クリティカルバリュー)

パニック値(クリティカルバリュー)は、生命に危機が及ぶ可能性がある極端な異常値です。この値が出た場合は、直ちに医師に報告され、迅速な治療が必要です。パニック値の報告が遅れると、患者の治療に遅れが生じることがあるため、医療機関全体で速やかな対応が求められます。

パニック値は、施設ごとに設定が異なるため、外来患者や入院患者、急性期や慢性期の違いを考慮して、あらかじめ施設内での設定と合意が重要です。

このデータが報告されても医師がパニックを起こす訳ではないため、近年ではクリティカルバリューと呼ばれるようになっています。

検体検査速報(パニック値)基準

検査項目日本医療検査科学会(2005年)1)日本臨床検査医学会
(2018年)2)
Lundberg
(1972年)3)
[髄液]細胞数(/uL)200<
[髄液]糖(mg/dL)<20
PT-INR2.00<2.00<<活性10%
FDP(ug/mL)20.0<
FIB(mg/dL)<100,700<
WBC(10^3/uL)<1.5,20.0<<1.5,20.0<
Hb(g/dL)<5.0<5.0,20.0<<5.0
Ht(%)<15%
PLT(10^4/uL)<3.0,100.0<<3.0,100.0<<3.0
MYEL-B芽球出現
AST(U/L)1000<300<
ALT(U/L)1000<300<
CK(U/L)5000<
AMY(U/L)1000<
LD(U/L)1000<1000<
ChE(U/L)<20
TB(mg/dL)[新生児]20.0<[新生児]12.0<
Glu(mg/dL)<50,[外来]350<,[入院]500<<50,[外来]350<,[入院]500<<40,700<
TP(g/dL)<4.0,10.0<
Alb(g/dL)<2.0,6.0<
UA(mg/dL)<1.0,10.0<
UN(mg/dL)80<
CRE(mg/dL)[急性]3.0<,[慢性]8.00<[急性]3.0<,[慢性]8.00<
LA(mmol/L)5.0<
HbA1C(%)12.0<
浸透圧(mOsm/kg)<255,330<
Na(mmol/L)<120,160<<115,165<<110,170<
K(mmol/L)<2.5,[外来]6.0<,[入院]7.0<<1.5,7.0<<2.5,6.5<
Cl(mmol/L)120<120<
Ca(mg/dL)<6.0,12.0<<6.0,12.0<<6.0,14.0<
PaO2(Torr)[急性]<50,[慢性]<40<40<40
PaCO2(Torr)<20,[急性]50<,[慢性]70<<20,70<<20,70<
pH<7.20,7.60<<7.20,7.60<<7.20,7.60<
HCO3-(mmol/L)<15,40<<14,40<<10,40<
BE(mmol/L)<-10,10<
SaO2(%)<90

1)中井利昭,桑 克彦, 関口光夫,他 極端値・パニック値対応マニュアル Ver.1.4. 日本臨床検査自動化学会会誌 2005;30 (Suppl.1): 1-190.

2)日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会編. 臨床検査のガイドライン JSLM2018. 2018.

3)Lundberg GD. When to panic over abnormal values. Med Lab Obs 1972;4:47-54.

参考文献:医療検査と自動化 Vol.49 Suppl.1 2024

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Sドラゴン
経歴:臨床検査技師→胚培養士→治験コーディネーター→アプリケーションスペシャリスト→研究開発・細胞培養→検査試薬メーカー技術員 保有資格:臨床検査技師免許 、緊急臨床検査士 、二級臨床検査士(臨床化学/免疫血清学)