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G-MISの経営情報データに基づいてクリニック転職のおすすめ地域を発表!

「クリニックに転職したいけど経営状況がよく分からなくて不安」

「診療科の多い地域は経営が厳しくなるからライバルの少ないクリニックを選びたい」

こんな方は厚生労働省がG-MISで収集した医療法人の経営情報データを見れば良いです。

この記事では、G-MISの解説と実際に得られる医療法人の経営情報データをご紹介します。

クリニックへの転職を検討している方はぜひ参考にしてください。

G-MISとは?医療機関等情報支援システムの概要

G-MIS (医療機関等情報支援システム) は、医療法人や介護サービス事業者から収集した経営情報をデータベース化し、医療政策の立案や支援に活用するためのシステムです。医療法の改正により、2023年8月以降、原則すべての医療法人に対して、毎会計年度終了後3カ月以内に経営情報を報告することが義務付けられました。

Sドラゴン
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この報告制度は、日本の医療機関が抱える課題に対応し、医療提供体制を強化するために設けられたものです。

背景と目的

医療法人を取り巻く環境の変化

  • 新型コロナウイルスの流行少子高齢化 に伴う医療保険財政の逼迫
  • 医療技術の高度化人件費の高騰

こうした要因により、医療機関の経営環境は厳しさを増しています。

データ活用の重要性

適切かつ迅速な医療政策の立案や支援には、正確で詳細な経営情報が不可欠です。そのため、医療法人から収集したデータを一元管理し、政策立案や医療機関支援のための基礎資料として活用する目的でG-MISが構築されました。

報告義務と内容

報告対象

原則として、すべての医療法人が対象となります。

Sドラゴン
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小規模クリニックなど、一部の特例が認められる場合もあります。

報告内容

G-MISに報告する情報は、病院や診療所単位で以下の詳細な経営データを含みます。

  • 収益情報:入院・外来診療収益、保険診療収益など
  • 費用情報:材料費、給与費、委託費、減価償却費など
  • 職員情報:職種別人数や給与総額
  • その他情報:医療法人番号、所在地、役員数、診療科目など

G-MISの活用方法

  • 医療政策立案への活用:医療機関の経営状況を把握し、この情報をもとに、医療政策の改善や地域医療支援策の立案を行います。
  • 公表範囲の制限:報告された情報から個人や法人の特定はできません。情報は統計データとして集約され、属性ごとの分析結果として提供されます。
  • 学術研究への提供:蓄積されたデータは、研究者が行う学術研究に活用されることも想定されています。

G-MISは日本の医療提供体制を維持・強化するための重要な基盤となります。医療法人に求められる報告義務は、地域社会への医療提供の安定性を保つと同時に、政策決定プロセスの透明性を高める役割を果たします。

医療法人の経営情報の分析結果(2024年3月公表分)

  • 医療法人の状況
  • 医療法人の経営状況
  • 都道府県別の状況

医療法人の状況

所在地(主たる事業所)別法人数

実施事業別法人数

本来業務実施事業別法人数

医療法人の経営状況

「事業収益」の規模別法人数

クリニックが事業で得た総収入を指します。外来診療収益、入院診療収益、保険診療収益、その他の収益が含まれます。

評価ポイント

  • 高い場合: 安定した患者数や診療報酬の取得ができている可能性がある
  • 注意点: 収益が高くても、支出がそれ以上に大きい場合は経営が不安定な可能性がある

事業黒字・事業赤字の割合

経営黒字・経営赤字の割合

医療法人の経営状況(全国平均)

事業収益対事業利益率

事業収益に対する事業利益(収益から直接的な費用を引いた利益)の割合。
計算式:事業利益率 (%)=事業利益/事業収益×100

評価ポイント

  • 高い場合: 効率的な経営ができていることを示す
  • 低い場合: 過剰な運営費用や不必要な支出がある可能性
経常収益対経常利益率

経常収益(本業に加えて経営に関わる収益)に対する経常利益の割合。
計算式:経常利益率 (%)=経常利益/経常収益×100

評価ポイント

  • 高い場合: 本業以外でも収益を効率的に管理している
  • 低い場合: 本業以外の損失(借入金の利息負担など)が経営を圧迫している可能性
本来業務事業利益率

医療行為(本来業務)から得た利益率。クリニックの「医療提供能力」の効率性を測る指標。

評価ポイント

  • 高い場合: 医療提供が安定して利益を生み出している
  • 低い場合: 医療以外の収益に頼りすぎている可能性。医療サービスの質や効率性に問題がある場合も
現預金回転期間

クリニックが保有する現金や預金が、運営資金としてどれくらいの期間回せるかを示す指標。
計算式:現預金回転期間 (日)=現預金/1日の平均支出

評価ポイント

  • 長い場合: 資金繰りが安定しており、経営リスクが低い
  • 短い場合: 突発的な支出への対応力が不足している可能性

都道府県別の状況

クリニックの選び方

  1. 安定性: 自己資本比率、流動比率、現預金回転期間を重視。
  2. 収益性: 事業収益対事業利益率、経常収益対経常利益率が高いクリニックを選ぶ。
  3. 将来性: 本来業務事業利益率や経常赤字割合を確認し、医療サービスの持続可能性を判断する。
各指標の意味と評価方法

事業収益
・クリニックが事業で得た総収入を指します。外来診療収益、入院診療収益、保険診療収益、その他の収益が含まれます。
高い場合: 安定した患者数や診療報酬の取得ができている可能性がある。
注意点: 収益が高くても、支出がそれ以上に大きい場合は経営が不安定な可能性がある。
事業収益対事業利益率
・事業収益に対する事業利益(収益から直接的な費用を引いた利益)の割合。
・高い場合: 効率的な経営ができていることを示す。
・低い場合: 過剰な運営費用や不必要な支出がある可能性。
経常収益対経常利益率
・経常収益(本業に加えて経営に関わる収益)に対する経常利益の割合。
・高い場合: 本業以外でも収益を効率的に管理している。
・低い場合: 本業以外の損失(借入金の利息負担など)が経営を圧迫している可能性。
本来業務事業利益率
・医療行為(本来業務)から得た利益率。クリニックの「医療提供能力」の効率性を測る指標。
高い場合: 医療提供が安定して利益を生み出している。
・低い場合: 医療以外の収益に頼りすぎている可能性。医療サービスの質や効率性に問題がある場合も。
事業赤字割合
・全体の事業収益に対して、赤字がどの程度占めているかの割合。
・高い場合: 経営改善が必要であり、将来的な不安定さを示唆する。
・低い場合: 健全な経営が行われていると判断できる。
経常赤字割合
・経常収益に対して、経常赤字(本業や副業の損失)がどの程度発生しているかを示す。
・高い場合: 借入金の返済負担やその他のコストが過剰。
・低い場合: 経営全般が健全に行われている。
現預金回転期間
・クリニックが保有する現金や預金が、運営資金としてどれくらいの期間回せるかを示す指標。
長い場合: 資金繰りが安定しており、経営リスクが低い。
・短い場合: 突発的な支出への対応力が不足している可能性。
自己資本比率
・全体の資産に対する自己資本(クリニックが純粋に持つ資本)の割合。
・高い場合: 経営基盤が安定している。
・低い場合: 借入金依存度が高く、金利負担が経営に影響する可能性。
借入金比率
・総資産に対する借入金の割合。
・高い場合: 借入金返済に圧迫され、資金繰りの悪化リスクが高い。
・低い場合: 経営が健全で、融資依存度が低い。
流動比率
・短期的な資金繰りの健全性を測る指標。流動資産(現金や売掛金など)と流動負債(短期借入金や支払手形)の割合を比較。
・高い場合: 短期的な支払い能力が高い。
・低い場合: 支払い能力が不足している可能性があり、経営リスクが高い。

医療法人数事業収益(千円)事業収益対事業利益率(%)経常収益対経常利益率(%)本来業務事業利益率(%)事業赤字割合(%)経常赤字割合(%)現預金回転期間(月)自己資本比率(%)借入金比率(%)流動比率(%)
全国平均731486,5844.76.24.933.523.23.252.337.5303.6
北海道1,614541,4113.04.43.138.425.42.845.439.0274.5
青森県232418,3852.84.93.039.225.93.265.026.7375.0
岩手県272411,6591.62.41.639.322.42.954.837.5315.2
宮城県443350,4343.24.93.333.422.83.154.537.4317.4
秋田県231465,8003.44.73.736.824.24.560.125.2405.2
山形県345300,9473.44.53.632.521.21.949.245.6281.1
福島県486386,2392.96.03.136.225.73.049.246.6253.2
茨城県491532,0225.37.15.630.821.03.650.542.9303.2
栃木県582418,1164.96.65.032.623.04.160.836.2384.2
群馬県579466,9444.05.34.331.323.03.250.542.3300.6
埼玉県1,603567,4796.08.06.130.621.03.454.830.1310.9
千葉県4541,139,4963.65.03.730.621.42.037.547.4203.4
東京都3,616518,4265.46.55.637.227.03.347.337.2274.3
神奈川県2,104407,6424.86.64.732.122.12.948.037.0299.0
新潟県656392,9833.34.63.432.922.72.348.546.7284.1
富山県157386,2204.15.64.122.917.24.251.459.4405.2
石川県344447,4334.05.04.231.720.32.347.431.3244.5
福井県212432,5863.85.44.134.924.53.360.638.3400.4
山梨県173416,2893.65.54.338.724.32.860.424.8318.9
長野県543396,0673.55.03.534.423.62.550.537.1257.0
岐阜県537437,6855.47.15.630.921.44.367.019.4335.1
静岡県872409,4065.56.75.326.119.83.058.342.3338.1
愛知県1,715543,4645.26.65.426.919.23.456.636.5352.0
三重県458418,8995.77.65.933.220.53.562.030.1318.4
滋賀県370318,8095.86.86.326.519.71.843.454.7290.2
京都府727499,6495.06.15.130.720.92.837.651.0244.0
大阪府2,658762,0357.78.77.931.722.22.850.634.5263.6
兵庫県1,685485,1574.66.04.732.023.13.248.841.7318.9
奈良県43247,6668.08.97.837.232.63.462.357.4443.3
和歌山県269399,3103.35.23.630.921.64.364.333.8402.0
鳥取県211356,5482.74.52.640.826.12.458.033.2308.5
島根県254240,5682.64.83.136.626.43.959.742.4421.0
岡山県661380,8474.16.44.332.821.63.351.745.2267.9
広島県1,087380,9414.15.84.232.922.33.563.826.3410.8
山口県553420,1382.74.33.230.721.33.762.530.5359.9
徳島県386415,9623.05.63.140.925.94.453.948.4405.9
香川県331386,8233.85.44.031.422.43.960.137.5413.8
愛媛県688341,8252.64.62.736.224.43.252.243.1314.9
高知県293677,6832.13.72.446.131.13.045.047.7307.6
福岡県1,898433,4564.56.24.834.524.04.057.631.3357.7
佐賀県360435,9063.35.43.532.520.63.254.637.6323.4
長崎県620409,0632.34.12.340.028.43.657.329.7283.8
熊本県733497,1803.55.33.537.723.94.055.239.9372.6
大分県446512,6504.15.54.236.123.53.556.136.7322.1
宮崎県374424,6983.65.13.834.524.13.550.749.0333.9
鹿児島県731391,5612.84.83.036.823.73.556.137.8357.3
沖縄県244412,9734.76.44.934.425.43.147.743.3335.1

やはり東京・大阪・福岡などの都心部はクリニックの数が多いですね。

千葉県は事業収益は飛び抜けて多いですが、借入金比率が高く流動比率が低めなようです。

基本は経常収益対経常利益率と本来業務事業利益率が同程度ですが、福島・千葉・長野・徳島・愛媛・長崎あたりが本来業務事業利益率が低く経常収益対経常利益率が高いです。

Sドラゴン
Sドラゴン

本業以外に何で収益されているのか気になりますね。

富山県は赤字の割合が極端に低いですが、借入金比率が高く、融資の依存度が高いことが気になります。

ざっくり見ると、関東より関西の方が経営は安定してそうでしょうか。

東北や中国・四国地方は経営が厳しそうですね。

クリニック転職でおすすめの地域とおすすめしない地域

以上のデータから、転職におすすめの地域とおすすめしない地域を発表します。

おすすめの地域

第1位. 大阪府

  • 理由:
    • 事業収益は全国平均を大幅に上回る(762,035千円)。
    • 各利益率が全国平均を大きく超える(事業利益率7.7%、経常利益率8.7%、本来業務利益率7.9%)。
    • 赤字割合も平均並み(事業赤字31.7%、経常赤字22.2%)。
    • 自己資本比率も平均的で、流動比率が良好(263.6%)。

第2位. 奈良県

  • 理由:
    • 各利益率が高い(事業利益率8.0%、経常利益率8.9%、本来業務利益率7.8%)。
    • 流動比率が非常に高い(443.3%)。
    • 事業収益はやや低いものの、小規模なクリニックでも健全経営が期待される。

第3位. 埼玉県

  • 理由:
    • 事業収益が高い(567,479千円)。
    • 利益率が高く、事業利益率6.0%、経常利益率8.0%。
    • 赤字割合が低く、経営の安定性が期待できる。

おすすめしない地域

ワースト1位. 高知県

  • 理由:
    • 利益率が全国で最低レベル(事業利益率2.1%、経常利益率3.7%、本来業務利益率2.4%)。
    • 赤字割合が非常に高い(事業赤字46.1%、経常赤字31.1%)。
    • 自己資本比率も低く、流動比率も平均以下。

ワースト2位. 長崎県

  • 理由:
    • 利益率が低く(事業利益率2.3%、経常利益率4.1%、本来業務利益率2.3%)。
    • 赤字割合が高め(事業赤字40.0%、経常赤字28.4%)。
    • 流動比率も低めで、財務の安定性に欠ける。

ワースト3位. 鳥取県

  • 理由:
    • 利益率が低い(事業利益率2.7%、経常利益率4.5%、本来業務利益率2.6%)。
    • 事業赤字割合が非常に高く、経営不安のリスクが高い。

まとめ

転職先として地域を選ぶ際には、利益率が高く、赤字割合が低い地域を優先すべきです。また、事業収益や自己資本比率の高さも重要ですが、規模が小さくても健全な財務状況を持つ地域も検討の価値があります。

上述のおすすめ地域を参考にしつつ、転職候補クリニックの具体的な経営状況も確認しましょう。

Sドラゴン
Sドラゴン

判断に迷うことがあれば民間のキャリアアドバイザーに相談する方法も良い手です。

医療従事者専門のキャリアアドバイザーなら病院・クリニックの経営にも詳しいため、さらに具体的な状況を聞けると思います。

情報収集だけでも無料で利用できるので、上手に使って欲しい情報を収集しましょう。

ABOUT ME
Sドラゴン
経歴:臨床検査技師→胚培養士→治験コーディネーター→アプリケーションスペシャリスト→研究開発・細胞培養→検査試薬メーカー技術員 保有資格:臨床検査技師免許 、緊急臨床検査士 、二級臨床検査士(臨床化学/免疫血清学)