「HBs抗原検査の保険点数って測定原理ごとに違うんだよね?」
「HBs抗原検査の保険点数って免疫分析装置での測定なら一律で88点だよね?」
今回はこんな疑問にお答えします。
本記事の内容
- HBs抗原検査の保険点数は「検査の目的」で変わります
- 保険請求先により解釈が少し異なります
- 社会保険診療報酬支払基金の「原則として入院時の検査」は要注意です
「結局、HBs抗原検査は何点で請求すれば良いの?」
この質問に対する回答は、「検査の目的によって請求する点数が異なるため、検査が何の目的で実施されたのかを確認する必要があります」です。
ということで今回の記事では、HBs抗原検査の保険収載内容について深堀りして解説いたします。
HBs抗原検査の保険点数は「検査の目的」で変わります
まず、HBs抗原検査の保険点数は「D013 - ①:29点」と「D013 - ②:88点」の2種類が存在します。
- HBs抗原定性・半定量・・・29点 注1)
- HBs抗体定性、HBs抗体半定量・・・32点
- HBs抗原、HBs抗体・・・88点 注2)
- HBe抗原、HBe抗体・・・104点
- HCV抗体定性・定量、HCVコア蛋白・・・108点
注1)HBs抗原定性・半定量は、免疫クロマト法、赤血球凝集法、粒子凝集法、EIA法(簡易法)、金コロイド凝集法による。
注2)EIA法、CLIA法、ECLIA法による定量的検査法
この29点・88点はどういう基準で保険点数が決定されるのか。
それは「検査の目的」によって変わります。
例えば、入院時の検査なのか、B型肝炎の治療中の検査なのか、などです。
※1点注意点ですが、審査機関により基準・解釈が多少異なります。
記号:社会保険・・・㊓ 国保・・・㋭
「D013」-1
- 人工腎臓実施時・・・「D013」-1㊓
- 内視鏡検査・・・ 「D013」-1㊓
- 心臓カテーテル・・・ 「D013」-1㊓
- 手術時・・・ 「D013」-1㋭
「D013」ー3
- B型肝炎疑い・・・「D013」ー3㊓
- B型肝炎の経過観察・・・「D013」-3㊓㋭
- 手術前と観血的検査前・・・ 「D013」-3㊓㋭ ※観血的とは・・・出血を伴うような状況
「D013」-1 または「D013」ー3
- 原則として入院時の検査 ・・・「D013」-1 または「D013」ー3㋭ ※令和2年9/8更新 解釈上どちらか明記せず
営業によっては「弊社の試薬は高感度なので88点で請求が可能です。」と説明される方をたまに見かけますが、その説明は大間違いです。
おそらく「D013」肝炎ウイルス関連検査の注2の記述「EIA法、CLIA法、ECLIA法による定量的検査法」見て言われているものと推測しますが、この註釈の正しい解釈は
「88点で請求できる検査の場合、EIA法、CLIA法、ECLIA法による定量的検査法を使用してください」
という意味です。
この点を勘違いしないように気をつけてください。
営業のレベルを確かめるためにも、あえて質問してみてみるのも面白いかもしれませんね。
保険請求先により解釈が少し異なります
審査機関には大別して、「社会保険診療報酬支払基金」と「国民健康保険中央会」 2つの機関が存在します。
審査機関の役割は「保険点数という1つの請求コードに対し、保険請求が適正化どうか?チェックすること」です。
患者様ご本人が加入している保険の種類に紐づき、どちらか一方で審査されます。
別々の機関であるため、チェックする基準が異なっているというわけです。
(過去より、社会保険の方が広く審査され、国保が狭く厳しめと囁かれていた!?)
社会保険診療報酬支払基金の「原則として入院時の検査」は要注意です
注意すべきは「「D013」-1または「D013」-3」のケースです。
「D013」-1にも「D013」-3にも該当しない入院時の検査がこれに当てはまりますが、どちらで請求可能かは詳細が明記されていません。
つまり、「自治体の支払い基金の判断」による部分が大きいため保険請求時は注意が必要です。
まとめ:HBs抗原検査は検査目的に応じて請求点数を使い分けましょう。
今回の記事のポイントをまとめます。
- HBs抗原検査は29点と88点があるが、検査の目的に応じて請求内容が変わる。
- 入院時の検査でも目的に応じて請求可能な保険点数が変化するため、保険請求時は検査の目的をしっかり抑えておく必要がある。
- 「「D013」-1または「D013」-3」」のケースの場合、どちらで請求可能かは「自治体の支払い基金の判断」となるため保険請求時には注意が必要です。
- 今使用している試薬メーカーの営業レベルを確認するためにも「お宅の試薬は保険点数は何点で取れるの?」と質問してみましょう。
「弊社試薬は高感度なので88点で請求できます!」は回答として不正解ですので、もしメーカーさんにこんなことを言われたら、押し売りが目的ですので警戒してください。
保険点数の観点から、最もコストパフォーマンスが優れるのは29点用の安価な試薬と88点用の試薬が別々に存在することですが、現在2種類のHBs抗原検査試薬を販売しているメーカーは1社のみです。
各社が保険収載の内容を適切に理解して、価格が異なる2種類の試薬を販売することを期待しておきましょう。
今回の記事が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また!