転職が決まらない理由は、求人とあなたの経歴にミスマッチがあるからです。これまでの職歴や経験、スキルが企業の求める人材像にマッチしていないことが原因です。
転職が決まらない場合に多くのキャリアアドバイザーから指示されるが応募数を増やすこと。
- 転職成功者は20社以上に応募しているデータがある。
- 求人に応募しなければ何も始まらない。
一見合理的に思える施策ですが、実はこの方法はかなり非合理的。ミスマッチのため応募企業からの印象が悪化するばかりか、見送りの件数が増えメンタルヘルスが損なわれることになります。
転職が決まらないあなたが本当にやるべきことは質の高い応募を増やすことです。
この記事では転職が決まらない30代、40代の方に向けて、質の高い応募を実現するための効果的な施策を4つご紹介します。
私自身、33歳で転職活動を開始してから2年間転職が決まらなくて悩んだ時期がありましたが、本施策に基づいて転職活動を進めたら35歳で大手日本企業から内定をもらえました。
転職活動が長引いて苦しい思いをされているなら試す価値ありです。
ぜひ参考にしてください。
応募数を増やす戦略のリスク|心理的バイアスの罠
転職サイトや転職エージェントに登録すると「応募数を増やしましょう」と言われますが、この考え方は基本的に確率論に基づいています。すなわち、応募数を増やすことで多くの企業と接点を持つ機会が増え、結果として面接の機会も増えるという理屈です。
しかし、30代・40代の転職において、この方法は禁忌。絶対にしてはいけない愚策です。
なぜなら、以下のような3つの問題点があるためです。
応募数を増やす戦略の3つの問題点
無駄打ちが多くなる
応募数を増やすことで、当然ながら企業とのミスマッチの可能性も高くなります。適性がないポジションや、企業のニーズと自分のスキルが合わない場合、運よく面接に進んでも優秀なライバルに阻まれ不採用になる可能性が高いです。
お見送りが増えることでメンタルヘルスが損なわれる
不採用の数が増えると自信を喪失し、今以上に転職活動が苦しくなるでしょう。残念ながら、応募数を増やすと不採用の連絡は確実に増えます。応募するたびにメンタルヘルスに深刻なダメージを受ける可能性があり、焦りから冷静な判断ができなくなってしまいます。
企業側からの印象悪化
応募数を増やすことでポジションに合わない応募が多くなり、企業側から「この候補者は本当に弊社に興味があるのだろうか?」と疑念を抱かれることになります。あなたの経歴が人並みであれば、疑念を抱かれた時点でお見送りとなるでしょう。
応募数を重視しすぎると応募書類の完成度が低くなり、希薄な志望動機が逆に不採用の可能性を高めます。
転職サイトの術中にハマった求職者の末路|転職サイトの心理的バイアスの罠
では、なぜ転職サイト側は応募数を増やすよう誘導してくるのか。その理由は、心理的バイアスの罠で説明できます。
例えばUFOキャッチャーで欲しい景品があったとします。何回かチャレンジしても上手く結果が伴わないため店員に取り方のコツを聞きます。店員は丁寧に景品の取り方のコツをレクチャーしてくれます。UFOキャッチャーの店員が「この方法でやれば取れる」と説明することで、顧客はそのアドバイスが最適なものであると信じやすくなります。店員に言われた通りに操作するにも関わらず、景品は取れません。でも、ユーザーはすでに投入したお金を「損失」として捉え、それを取り戻すためにさらにお金を使ってしまうという行動を取ります。店員に相談して「もう少しで取れます!」と囁かれた結果、投入したお金を取り戻すためにさらにお金を使い続けます。
これ、実は多くの場合に店員は絶対に取れない方法をレクチャーしてきます。だってその方が客はお金を落として会社の利益につながるから。
転職サイトも同じで、求職者に応募数を増やさせることで「損失回避の法則」「フレーミング効果」「サンクコスト効果」「希少性の原理」を誘導し、待遇が悪い人気薄求人に応募させることができます。
損失回避の法則
損失回避の法則とは、利益を得ることよりも、損失を避けることの方が人間にとって強力な動機になるという心理学的な理論です。
転職活動で自分に合わない求人に応募し続けても、時間や労力を既に投資してしまったため、その状況を改善するために、妥協して不本意な求人に応募してしまう可能性があります。
フレーミング効果
フレーミング効果は、情報がどのように提示されるかによって意思決定が変わるという理論です。
転職サイトが「この求人はあなたに合っています」や「人気の求人です」と強調することで、実際にその求人が自分に適しているかどうかを考える前に、その求人が魅力的であると感じさせる可能性があります。
サンクコスト効果
サンクコスト効果とは、すでに投資した時間やお金、労力が無駄になることを避けるために、その行動を続けてしまう心理的バイアスです。
転職活動ですでに多くの時間やエネルギーを費やしているため、「妥協してこの求人で決めてしまおう」という心理が働くことがあります。
希少性の原理
希少性の原理は、何かが「限られている」「手に入れにくい」と感じると、それがより魅力的に見えるという効果です。
求人情報に「残り1名募集」や「応募期限が迫っています」といった情報が強調されると、本来は興味のない求人であっても「今しかない」と感じて妥協して応募してしまう可能性が高まります。
これらの心理的バイアスはメンタルが弱って思考力が低下している時に最もハマりやすくなります。
応募数を増やす→お見送りが増えてメンタルがやられる→心理的バイアスの罠にハマる→意図しない人気薄求人に応募してしまう。
これが、転職サイトの術中にハマってしまった求職者の末路です。
内定を勝ち取るための4つの具体策|質の高い応募とは?
転職サイトの心理的バイアスの罠にハマらず、妥協しないで理想の企業から内定を勝ち取るには質の高い応募を徹底することです。
具体的には下記、5つのステップを経由することで質の高い応募を実現できます。
- AIを活用して自己分析を深める
- 自己分析結果に応じて最適な専門職へ応募する
- 応募職種をカスタマイズする
- 面接対策を徹底する
AIを活用して自己分析を深める
まずはあなたの得意(強み)を見つけること。ここが転職活動の要であり原点です。
キャリアの棚卸しを行い、これまでの経験やスキルを活かせる業界・職種を見つけます。
具体的には、下記の2点を洗い出してください。
- 他者に比べて優れているスキルや経験
- 国家資格、上級資格など取得ハードルが高い資格の保有
特定職種の実務経験やPCスキル、プログラミングスキル、ITスキルなど、一朝一夕では身につけられない経験やスキルを洗い出してください。
また、医療系、士業などの国家資格や一級簿記、英検一級など、取得のハードルが高い資格があれば書き出してください。
自分の得意なことは自分では見つけられない。そんな時は家族・友人などの第三者から意見をもらうことが効果的です。自分では気付いていない思わぬ強みが見つかります。
各種の洗いだしが終わったら、ChatGPTやリートンなどの無料AIチャットに以下のプロンプトを入力します。私の結果を例に解説します。
キャリアの棚卸しを行った結果に基づいて、私に最適な転職先の業界・職種を提案してください。
<他者に比べて優れているスキルや経験>
・医療業界での15年間の勤務実績
・総合病院、不妊クリニック、治験コーディネーター、研究開発職、医療機器メーカーでの実務経験
・VBA、Pythonによる業務効率化ツールの開発実績
・コンシューマ向けプロダクトのプロジェクトリードの経験とローンチ実績
<国家資格、上級資格など取得ハードルが高い資格の保有>
・臨床検査技師
・二級臨床検査技師(生化学・免疫血清)
・緊急検査士
他に確認事項はありますか?
業界・職種を選定するにあたり、他に確認事項があればAIから聞き返されますので、適宜返答してください。特に確認事項がなければ自分に最適な業界と業種を回答してくれます。
希望する働き方や転職の優先事項に対する確認があったため、下記を追加で回答しました。
確認事項への回答です。
1.オフィス出社、リモートのハイブリッドを望みます。ある程度のワークライフバランスを求めます。
2.給与は高い方が良いです。将来的にはマネージャーになりたいのでキャリアアップの機会も欲しいです。
私の経験、スキル、保有資格ではヘルステック企業や医療機器メーカーが最適な選択肢であることがわかりました。
この結果を元に、次のステップで自分に最適な専門職へ応募しましょう。
自己分析結果に応じて最適な専門職へ応募する
ここでのキーワードは「専門職」です。
30代・40代の転職では業務内容が曖昧で多岐にわたるような「総合職」ではなく、業務内容が限定された「専門職」に応募することが転職成功の鍵です。
AIから提案された業界・業種を転職サイトで検索するか、業界特化型の転職エージェントを活用することで目的の求人は簡単に見つかります。
私は転職サイトはdodaとミドルの転職、転職エージェントはJACリクルートメント、ランスタッド、リクルートダイレクトスカウト、ビズリーチに登録しました。
各社のおすすめポイントは後ほど解説します。
応募書類をカスタマイズする
質の高い応募では職務経歴書を使い回すことはせず、企業ごとにカスタマイズした書類を作成します。企業の価値観やニーズに合わせて、自分の経験やスキルをどう活かせるかを明確に伝えることで、採用担当者にポジティブな印象を与えることができるからです。
具体的には、下記3点を応募求人に合わせて修正する必要があります。
応募職種に合わせたアピールポイントの強調
応募する職種に応じて求められるスキルセットは確実に異なります。求人票の応募条件・歓迎条件を参照して、アピールポイントをカスタマイズしましょう。
同職種でも企業が異なれば求められる要件が変わることに注意してください。
応募先企業に合わせた志望動機の記載
企業側が30代・40代を採用する際に重要視するポイントは長期定着するかどうかです。そのため、企業の価値観やカルチャーに応じて志望動機を修正し貴社の社風にフィットする人材であることを訴求して長期定着することをアピールしましょう。
特に転職回数が3回を超えている場合は早期離職を懸念されますので、すぐに辞めないことを入念にアピールしましょう。
職務概要の修正
採用担当者が最初に目にする部分です。この箇所で採用担当者のココロをガッチリ掴んでおけばその後の内容を熟読してもらえるため、最も繊細に構成を考える必要があります。
職務経歴書の最初の部分ですが、他の箇所との整合性を取るためにも最後に書き上げましょう。
内容の8割は過去の実績、残りの2割で応募(企業)に対する熱意を伝えましょう。
熱意(好意)を伝えることは、ポジティブ感情の伝搬効果、情動的コミットメント、レシプロシティの原則効果により内定獲得の可能性を高める狙いがあります。
面接対策
面接は事前の対策の有無で結果に雲泥の差が生まれます。それにも関わらず準備に時間を要し、練習が面倒であることから多くの求職者がないがしろにする部分です。
つまり、対策するだけでライバルより優位に転職活動を進めることができます。
具体的な対策方法は下記の通りです。
企業リサーチ
企業の価値観やカルチャーを理解するためには情報収集が必須です。求人票の内容に加えて、企業のWEBサイトや転職会議などの従業員の口コミ投稿サイトを閲覧することでかなりの情報を収集することができます。
口コミ投稿サイトでは過去に面接で聞かれた質問も投稿されているため必ずチェックしましょう。
自己分析の深掘り
面接を想定して、下記の質問に対する回答を準備してください。
理由を具体的な業務エピソードで補足できるようにしてください。
企業リサーチの結果から得た、企業が好む傾向を回答に盛り込んでください。
- 自己紹介
- これまでの経験・実績
- 業務する上で工夫している点、その背景
- 現職で苦労した経験、どのようにそれを乗り越えたか
- 志望動機
- 転職理由
- 自身の強み・弱みは
- 今後同社でどのような仕事をしていきたいか、またどのような貢献ができるか
- 前職ではどのような役割・効果を期待されていたのか。それにどのように応えてきたか
- 上司・同僚からの評価は
- 英語力に自信はあるか
- 将来のビジョン、希望条件(年収、入社日など)
- 企業への質問 ※今後の方向性や、職務内容への質問など複数準備する。
お疲れ様でした。ここまで準備ができたら完璧です。
質の高い応募に特化した転職エージェント4選
自己分析に始まり、情報収集、職務経歴書のカスタマイズ、面接練習。正直、質の高い応募は1つの求人に応募するだけでもかなり疲れます。
そのため、可能性な限り転職エージェントに協力してもらう方が良いです。
質の高い応募に特化した転職エージェントの条件は、両面型であることと、あなたの強みが活かせる業界を得意としていること。この2点を満たす転職エージェントを活用すれば転職活動がかなり楽になります。
参考として、私が利用していた両面型転職エージェントと彼らが得意とする業界を紹介します。
JACリクルートメント
ランスタッド
リクルートダイレクトスカウト
ビズリーチ
金融 | 保険 | 不動産 | 建設 |
コンサルティング | 士業 | IT・インターネット | メーカー |
商社 | 流通・小売 | サービス | メディカル |
マスコミ・メディア | エンターテインメント | 運輸・交通 | 物流・倉庫 |
エネルギー | 教育 | 官公庁 | その他 |
経営 | 管理 | 人事 | 営業 |
マーケティング | サービス | コンサルタント | 専門職 |
プロジェクト管理 | IT技術職 | ITコンサルタント | WEBサービス・制作 |
デジタルマーケティング | ゲーム | 広告 | 新聞・出版 |
テレビ・放送・映像・音響 | デザイン | 電気・電子 | 機械 |
半導体 | 化学 | 素材 | 食品 |
化粧品 | 日用品 | 金融 | 不動産 |
建築・土木 | 施工管理 | 医療営業 | 研究・臨床開発・治験・ |
生産管理・品質管理・品質保証 | 学術・PMS | 薬事 | 医療・看護・薬剤 |
質の高い応募を継続するためのメンタルコントロール
何社もお見送りが続き、転職期間が長くなると
自分にはスキルが何もない
市場価値がない
転職が決まらなくて惨めすぎる
このように悲観的になってしまうのは人間なら当然です。
とはいえ、このような精神状態ではせっかく理想の求人に巡り合っても良い結果に繋がりにくくなります。
転職期間中の精神状態を良好に保つためのメンタルコントロール方法を3つご紹介します。
セルフコンパッションを実践する
セルフコンパッション(Self-compassion)とは、自分に対して優しさや思いやりを持つことを指します。転職活動中は、結果が出ないと自己批判的になりがちですが、これではモチベーションが低下してしまいます。セルフコンパッションを実践することで、失敗や挫折を客観的に受け止め、自己評価を高めることができます。
具体的な方法
- 自己批判をやめ、自分の努力を認める習慣をつける。
- 転職活動での失敗を個人的な問題ではなく、普遍的な人間経験の一部として受け入れる。
- 自分に「誰でも苦しい時期はあるが、これも成長の一部だ」と声をかける。
目標を細分化し、成功体験を積む
大きな目標だけにフォーカスしてしまうと、達成までの道のりが長く、途中で挫折しやすくなります。大きな目標を小さく分割し、短期間で達成できる具体的なステップを設定することで、徐々に成功体験を積み重ね、メンタルの安定を図ることができます。
具体的な方法
- 「月に10社応募する」という大きな目標ではなく、「今週3社に応募する」などの短期目標を設定する。
- 応募の準備として、1日30分リサーチを行うなどの習慣化を目指す。
- 目標を達成するたびに自分を褒め、ポジティブなフィードバックを与える。
リフレーミングでポジティブに捉える
リフレーミング(Reframing)とは、出来事を別の視点から捉え直すことで、ネガティブな感情をポジティブな感情に変える方法です。例えば、お見送りが続くと「自分はダメだ」と思うことがあるかもしれませんが、それを「この経験を通して自分に合った企業が見つかりやすくなっている」とポジティブに捉えることが大切です。
具体的な方法
- ネガティブな出来事が起こったとき、それを学びや成長の機会として考える癖をつける。
- お見送りの通知を受け取った際、「自分に合わない企業と出会わずに済んだ」と解釈し直す。
- 毎日3つ、自分にとってプラスに働いたことや感謝すべきことを記録し、ポジティブな視点を育てる。
これらのメンタルコントロール方法を実践することで、転職活動中に精神的な疲れを軽減し、持続的に質の高い応募を続けるためのメンタルの安定を図ることができます。
まとめ:質を重視した応募で不採用通知のストレスを減らそう
転職がなかなか決まらない方に向けて、内定を勝ち取るために今すぐ試すべき具体策を4つ解説しました。
私は33歳から転職活動を開始して2年間お見送りが続きましたが、今回ご紹介した方法を試したことで内定獲得率(内定取得数/最終選考数)が100%になりました。
一つでもやっていなかったことがあればぜひ試してみてください。