医師の労働時間削減を目的に策定された、臨床検査技師へのタスク・シフト/シェアですが、日本臨床衛生検査技師会(日臨技)が実施した令和5年度の調査で面白い結果が出たのでご紹介します。
【令和5年度】タスクシフト・シェアの施設実態調査の結果
- 当該計画策定のための院内会議に臨床検査室が参加していない施設が7割にのぼった。
- 日本臨床衛生検査技師会が実施するタスクシフト/シェアに関する厚生労働大臣指定講習会の受講料を施設負担としている施設ほど、法令改正により追加された 10 行為を実施していることが示された。
- 講習会の受講意識を年齢層別で分析したところ,年齢が高くなるほど講習会の受講意思が減少する傾向が示された。
出典:医学検査 Vol.73 No.4 (2024) p.794-799 DOI: 10.14932/jamt.24-42
この結果から分かることは、多くの施設が医師労働時間短縮計画には消極的ということ、今の業務で手一杯ということです。
年収は400万円そこそこで変わらないのに仕事量だけ増える、そのための講習会参加費用は自費。
こんなの上からかなり強めの圧がかからない限り動く訳がありません。
ちなみに、法令改正により追加された 10 行為は以下の通り。
- 医療用吸引器を用いて鼻腔、口腔又は気管カニューレから喀痰を採取する行為
- 内視鏡用生検鉗子を用いて消化管の病変部位の組織の一部を採取する行為
- 運動誘発電位検査
- 体性感覚誘発電位検査
- 持続皮下グルコース検査
- 直腸肛門機能検査採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に接続されたチューブにヘパリン加生理食
- 塩水を充填する行為
- 採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に点滴装置を接続する行為
- 採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に血液成分採血装置を接続・操作・抜針びび止血を行う行為
- 静脈を確保し、超音波検査のために静脈路に造影剤注入装置を接続・操作・抜針及び止血を行う行為
これらの行為をしたい方、余計な業務が増えてほしくない方どちらにせよ、タスクシフト・シェアの検査室の動向は必ず確認しておきましょう。
臨床検査技師の働く場所の注意点
「タスクシフト・シェアが進んでない施設がいいなぁ。」
「うちの施設はタスクシフト・シェアが進んでなくてラッキー!」
こう思った方は少し注意が必要です。
見通し厳しい
— kenkenken (@gogotomatoto) October 24, 2024
医療機関の9%が外来縮小、働き方改革で 日本医師会:日本経済新聞https://t.co/xBKot4Djrn
タスクシフトが上手くいかなくても、医師の働き方改革は強行されます。つまり、病院としては働ける医師がいないなら外来を縮小させるしか方法がなくなります。
外来が縮小する🟰病院の収益が減る、検査数が減る
収益が減るとコロナで前例があったように夏冬のボーナスが減額またはカットされるかもしれません。
検査数が減ると検査技師の人員整理が進み、検体検査はブランチ・FMS化されるでしょう。実際、直近1年で検査センターのブランチ・FMS化は前年度比1.5倍程度増加していますし、外来縮小により検査センターが撤退する施設も出てきています。
タスクシフト・シェアが進んでいない病院の方が技師の負担は少ないかもしれませんが、高い確率で医師不足→患者数減少によりボーナスカットや経営破綻に追い込まれるでしょう。
この先何年技師として働くのか。
業務量とご自身のキャリアプランを天秤にかけて、勤務する医療機関は慎重に選びましょう。