検査技師の仕事にやりがいを感じれない
自分には技師の仕事は向いていなかった
このまま臨床検査技師を続けて大丈夫だろうか
今、このように悩んでいませんか?
私も臨床検査技師として医療機関に勤めていましたが、4年と10ヶ月で退職して検査技師からサラリーマンにキャリアチェンジしました。
臨床検査技師からキャリアを始めて、胚培養士、治験コーディネーター、医療機器メーカー、バイオベンチャー、検査試薬メーカーと職を転々としてきましたが、病院を辞めてから10年が経過した今、当時一緒に働いていた先輩技師の姿を見たり学会に参加して、色々と思うことがあります。
この記事は、私の企業に転職した経験と検査技師を辞めてから10年経過した「今」思うことをお話しします。
結論、臨床検査技師を退職して半分後悔しています。
臨床検査技師をこのまま続けるかどうか迷われている方が今後のキャリアプランを考える上で少しでも参考になれば良いなと思います。
臨床検査技師を退職した理由|向いていないと感じた瞬間
私が臨床検査技師の仕事が向いていないなぁ・・・と感じたのは
- 1日を通して誰とも話さない日がある
- 同じ作業の繰り返しで変化がなくつまらない
- 医療にそこまで興味がなかった
1日を通して誰とも話さない日がある
私は大病院で免疫検査を担当していました。
cobas、アーキテクト、AIA、AP-X、μ-TASなどの検査機器の担当者として、週の大半は機械と一緒に仕事をしていました。
一人で検査を回している時間が多く、他部署との関わりも少なかったため、朝から夕方まで誰とも話をしない日がよくありました。不意に話しかけられて声の出し方が分からなくて困った経験があります。
高校・専門学校時代はラーメン屋でアルバイトをしていました。接客が好きだったからです。検体検査担当者が仕事で人と接するのは採血の時ぐらいです。もっと患者さんと接する仕事だと思っていたため、ギャップを感じてしまいました。
同じ作業の繰り返しで変化がなくつまらない
出勤して装置を立ち上げて、コントロールを測定して、精度管理結果をまとめて、遠心分離した採血管を分注器にセットして、測定結果を確認して、再検査の指示を出して、結果を報告する。検体が落ち着いたらメンテナンスをして試薬を補充して。翌日のコントロールを準備して、ダラダラ流れてくる検体をさばいて。外来が終わると同時に装置の洗浄をしてダッシュで帰る。
好奇心が旺盛で新しいことが好きな私にとって、毎日が退屈でした。
検査にそこまで興味がなかった
そもそも、私が臨床検査技師になろうとしたきっかけは、友人に誘われたから。
高校2年生の時に進路が決まっていなくて、仲が良かった友人に「検査技師になろう!」と声を掛けてもらいました。別にやりたかったこともなかったし、病院勤めなら安定しているだろう、学費も安かったため臨床検査技師の専門学校に行くことを即日で決めました。
臨床検査技師として目指していた目標もなく、日々の業務にやりがいを感じていた訳でもなかったため、辞めることに抵抗はありませんでした。
専門学校の学費が安かったことも「サンクコストの呪い」に掛からなかった理由かもしれません。
興味もやる気もなく、適性もなかったことが「自分には検査技師は向いていない」と思った理由です。
臨床検査技師を退職したその後の人生
臨床検査技師を退職して10年経ちましたが、これまでに5回転職し、結婚・離婚・再婚を経験しました。3人の子供にも恵まれ、来年にはもう1人子供が増える予定です。
退職後の職歴
これまでの職歴を簡単にお示しします。
- 胚培養士:不妊クリニックで細胞培養、血液検査、精液検査を担当。
- 治験コーディネーター:急性期病で腎性貧血・くも膜下出血後のスパズム予防の試験を担当
- 医療機器メーカー:アプリケーションスペシャリストとしてカスタマーサポートに従事
- バイオベンチャー:CHO細胞によるMSを活用した成分分析、FERT Pair Assayの開発、コンシューマ向け検査サービスのローンチ、衛生検査所の管理者などを研究開発職として従事。
- 試薬メーカー:技術サポート職として、試薬検討・検討報告書の作成を実施
臨床検査技師のままでは経験できない業務を多く経験でき、自身の知見が広がりました。
退職後の年収
臨床検査技師からサラリーマンになって最も実感するのが年収の増加でした。
技師時代は手取りが20万強、年収だと最高でも440万円程度でした。退職後の年収は下記の通り。
- 胚培養士:450万円(26歳)
- 治験コーディネーター:500万円(28歳)
- 医療機器メーカー:650万円(31歳)
- バイオベンチャー:600万円(34歳)
- 試薬メーカー:700万円(35歳)
年齢が上がっていることを加味しても、臨床検査技師よりもはるかに年収は高くなりました。
退職後のプライベート
年収がそれなりにいただけるようになったこともあり、結婚して子供を持つことを前向きに考えられるようになりました。おそらく、臨床検査技師のままだと結婚はしていたとしても子供を4人も持つことは考えなかったと思います。
マイホームも購入したし、好きなことにお金を使っても毎月それなりに貯金ができている。
そんな、余裕のある暮らしができています。
臨床検査技師を退職して後悔していること
生活の質は間違いなく向上したし、今の時代に子供を4人も持てるのは本当に幸せなことです。
ただ、メーカーの立場から臨床検査技師を見ていると羨ましくなることもあります。
専門家として実績を残せる
特定の検査領域を極めることで、学会発表や論文投稿など、目に見える実績を残すことができます。実績が積み重なればその領域の権威として全国で活躍することができます。一定以上の実績を残せるとメーカーからのサポートも手厚くなり、更に実績を残しやすくなるといった正のサイクルが加速します。
臨床に介入できる
臨床との距離が遠く、パニック値報告など最低限のやりとりしかできていない施設が大多数だと思いますが、本来、検査技師は検査のプロとして検査結果の速報、追加検査の提案など、医師をサポートできる立場にあります。医療機関で働いていれば検査技師冥利に尽きる活動が行える点は企業では絶対できないことです。
「病態」に毎日触れられる
企業にいるとRCPCや症例報告などしか病態に触れる機会はありません。検査技師は毎日検査データと向き合い、診療記録を通して生の「病態」を確認できるため、データサイエンティストとしての知見を高めることができます
臨床検査技師が向いてない・辞めたいと考えている人へ
臨床検査技師を辞めて企業に入ることはいつでもできます。企業に転職すれば給料や休日などの待遇面は確実に良くなります。でもそれだけです。実績ややりがいは何も残せません。
一方臨床検査技師は、検査データや投薬歴から病態を推測すること、時系列からこの先の病態の変化を予測すること、病態の変化を予測して検査の追加を提案することなど、技師だからこそできることがたくさんあります。やりがいや仕事の深さは間違いなく臨床検査技師の方が上でしょう。今の仕事に面白みを感じていないのは、臨床検査技師としての最低限の仕事しか携われていないからだと思います。
検査室の方針で臨床に口出しできないなら、既に臨床と積極的にコミュニケーションを取っている医療機関に移動すれば良いです。学会発表に無頓着な職場なら、盛んに学会発表している技師と交流を持てば良いです。
ルーチンがつまらないからという理由だけで検査技師を辞めるのはもったいないです。病態把握の知見を深め、臨床との交流を増やし、臨床検査技師という職をもう少し続けてみてはいかがでしょうか。