ベンチャー企業やスタートアップへの転職は、革新的なアイデアや製品に携わり、組織の成長と共に個人のキャリアを加速させる大きなチャンスを提供します。
しかし、30代で大手企業からベンチャー企業やスタートアップなどの中小企業に移る場合、多くの機会と同時に大きなリスクを背負うことになります。
本記事では大手企業を離れ、ベンチャー企業やスタートアップで働くことを決めた場合、転職に伴う重大な3つのリスクを解説します。
私自身、32歳の時に大企業からバイオベンチャーへ転職しましたが、このリスクの認識が甘く35歳で再び大企業に戻ることを決断しました。
本記事が、大手企業からの転職を検討されている方の参考になれば幸いです。
30代で大手からベンチャー・スタートアップに転職する3つのリスク
年収ダウンかつ昇給の見込みが少ない
大手企業は一般に、安定した高収入を提供し、人事評価制度により適切な昇給の機会が提供されています。
これに対し、ベンチャー企業やスタートアップ等の中小企業では、資金調達の段階やビジネスモデルの成熟度に応じて、限られた資源を運営に充てることが多いです。そのため、初期段階の企業への転職は、特に短期的には年収の低下を意味することがあります。
また、利益が再投資されることが多く、どれだけ成果を出したとしても昇給やボーナスの見込みが少ない、または全くない場合もあります。
私自身、入社1年目(8月入社)とチーム内表彰を受けた入社3年目のボーナス金額が全く同じだった経験から、年収アップは不可能と判断し転職を決意しました。
このような状況は、家族を養う、または定期的な収入が必要な人にとっては特に考慮すべき点です。
中小企業へ転職する場合、入社時の年収が今後のあなたの上限年収と理解すべきでしょう。
福利厚生が皆無
健康保険や退職金制度、子育て支援や教育支援など、従業員が働きやすい環境を整えるための福利厚生は、従業員の生活の質を大きく左右します。
ところが、多くの中小企業では資金の制約や運営の規模が限られているため、大企業が提供するような充実した福利厚生プログラムを実施することが難しいのが現状です。従業員が自己の健康や将来に対する不安を感じる環境では、企業へのロイヤルティや仕事に対する献身的な姿勢を期待することは難しく、これが結果として企業の成長や競争力の低下につながる可能性があります。
私が勤務していた中小企業では最低限の福利厚生しか整備されておらず、退職金制度すらありませんでした。
雇用契約締結前に企業からは積極的には開示されないため、福利厚生の確認は意外と見落とされがちです。
雇用契約書にサインする前に、必ず福利厚生の充実度は確認しましょう。
ネームバリューが低くキャリア形成に悪影響
大手企業はそのブランド名が強い信頼性や専門性の象徴となり得ます。
一方で、多くのベンチャー企業やスタートアップは、一般には知名度が低いか、まったく知られていないことが多いです。そのため、キャリアの後半で他の企業への転職を考えた場合、履歴書上での企業名の認知度が低いと、選考過程で不利になる可能性があります。
特に、業界内でのネットワーキングや次のキャリアステップを考える際に、企業の名声は重要な要素となるため、転職エージェントからスカウトされる機会が激減し、次回の転職活動が驚くほど難航することになります。
私は大企業に転職が決まるまでに2年かかりました。
【覚悟】大手には簡単には戻れない
大手企業からベンチャー企業やスタートアップへ転職すると、再び大手に戻る道が狭まる可能性があります。
大手企業は、一般に組織内での長期的なキャリア構築を重視し、特定の業界や職種での深い経験を求めることが多いです。一方、ベンチャー企業やスタートアップでは、多様な業務に対応するための幅広いスキルが必要とされますが、これが大手企業の求める専門性と一致しない場合があります。
そのため、ベンチャー企業やスタートアップでの経験が大手企業で高く評価されない可能性があり、転職市場での競争力が低下する恐れがあります。
また、中小企業では、社員の転職に伴う技術の流出が事業失敗に直結することがあります。そのため、入社時には「退職後は同業他社に転職しないこと」などの念書にサインをさせられることがあります。
退職時に企業からの技術流出を防止するためのセミナーに強制さんかさせられました。
あなたが優秀な人材であるほど執行役員から固執され、退職時には嫌がらせを受けることになるため、精神的に非常に辛くなります。
まとめ
中小企業は従業員の愛社精神に支えられることが多く、この深い組織への帰属意識と共同体意識が、企業文化の核となっています。
起業時のメンバーや執行役員のポジションにいる社員ならまだしも、外部から転職してきた人々がこのような環境に順応し、長期間にわたって企業に貢献することは困難な場合があります。
転職者が中小企業の既存の価値観や文化に溶け込むためには、愛社精神を理解し、受け入れることが必要です。
この過程は容易ではないため、転職組が長く続かないことがしばしばあります。
この現象は、中小企業が直面する人材獲得と保持の課題を浮き彫りにしています。
今回解説したリスクは、実際に私が中小企業で目の当たりにした事例のため、机上の空論ではありません。これらのリスクを受け入れる覚悟がある方のみが、ベンチャー・スタートアップへの転職で豊かになれるでしょう。