本記事では、医療(検査)機器メーカーのアプリケーションスペシャリストが行う「新規設置施設の立ち上げ業務」について解説します!
新たに自社装置を導入する施設に対して、下記の業務を行います。
- 顧客と新運用についての事前相談
- 検査機器と検査システムのオンライン打ち合わせ
- 装置設置後のアプリケーション登録
- 顧客要望に応じた基礎検討の実施
- 検討結果の報告書作成業務
- オンラインテストの実施
- 顧客トレーニングの実施
- 臨床への報告業務の補助
- ルーチン開始の立ち合い
新規設置は売上UPに繋がるため営業は鼻息が荒いですが、アプリケーションスペシャリストからすると確認事項が多岐にわたるため少々骨が折れる業務です。
アプリケーションスペシャリストの他の業務についてはこちらの記事でまとめています。

顧客と新運用についての事前相談
装置入れ替え後も顧客がスムーズにルーチン検査を実施できるように環境を整えてあげる業務です。
新しく装置を入れ替えた場合、これまでの検査室の運用がそのまま流用できるとは限りません。
どの運用が流用できて、どの運用が流用できないのか、現状の運用をヒアリングしながら自社装置で実現できることを考えます。
- 朝何時から装置を立ち上げるのか
- QC測定は誰がいつ何を流すのか
- QC結果の確認はどうやってするのか
- メンテナンスはいつ実施するのか
- 試薬の補充はいつするのか
- 測定する検体種は何か
- レンジオーバー時の希釈倍率はいくつに設定するのか
- 夜間の装置の状態はどうしておくか
これらは確認すべき事項の一部ですが、他にもヒアリングすることが山のようにあります。
検査機器メーカーで確認事項の一覧表などのリストがあるので、それに沿って確認すれば基本的には漏れることはありません。
検査機器と検査システムのオンライン打ち合わせ
バーコード測定するために、装置の項目情報と検査システムを連携させるための業務です。
オンライン測定
装置と検査システム間の項目情報のやりとりは「コード番号」の受け渡しで行います。
例えば、TSHは101、CEAは203のように、装置側で各項目ごとに決められているコード番号を検査システムと紐付けます。
データフラグの取り込み
測定結果にレンジオーバーや感度未満のようなデータアラームが付加されることがあります。
データアラームもコード番号が決まっており、装置からはアラーム内容に応じたコードが検査システム側へ送信されます。
送信されたデータアラームを検査システム側でどのように制御するのかを決める必要があります。
このアラームは取り込む、このアラームは無視する、のように全データアラームの対処方法を相談します。
定性変換のアルゴリズム
感染症検査や血清情報などは、出てきた数字を陰性、陽性、-、+-、1+、2+、3+のように定性変換する必要があります。
どの値がカットオフ値なのかをオンライン会社にお伝えする必要があります。
再測定時の希釈指示
希釈測定が必要な場合、オペレーターが指示するのか、自動で依頼を立たせるのか、自動の場合は何倍希釈で設定するのか、これらを確認します。
その他
例えば、前回値の値が異常高値なら初めから希釈測定させる、この項目は初検から希釈測定させるなど施設の運用に応じてオンライン仕様をカスタマイズします。
施設の要望、装置での実施の可否、オンラインメーカーでの対応の可否、これらを調整することになります。
装置設置後のアプリケーション登録
設置機器に測定用パラメータをインストールする作業です。
検査機器はいきなり試薬を投入しても測定はできません。
各項目のアプリケーション情報を装置にインストールする必要があります。
採用項目を事前に把握しておき、装置が稼働できるようになったらアプリケーションを登録して測定できる状態まで仕上げます。
顧客要望に応じた基礎検討の実施
顧客が要望する各種検討を実施する業務です。
機器設置後、基本的には各社の決められた性能試験を実施して装置の状態を確認します。
性能試験に合格して初めて顧客へ装置を引き渡すことができます。
しかし、ISOを取得している、病院で取り決めがあるなどの理由で基礎検討の実施を要望される顧客も少なくなりません。
その場合は、顧客と実施内容を相談して、ルーチン開始までに検討を終える必要があります。
- 正確性試験
- 同時再現性試験
- 日差再現性試験
- 相関試験
- 最小検出感度
- 希釈直線性試験
- 干渉物質の影響
これらの内容を決められた期間内で終了させる必要があります。
各試験の詳細な内容については別記事でまとめます。
検討結果の報告書作成業務
検討データを報告書にまとめる事務作業です。
基礎検討の結果は報告書に起こして顧客へ提出する必要があります。
検討内容のボリュームにもよりますが、項目数、検討内容が多いほど作業量が多くなります。
更に、顧客によってはルーチン開始までに報告書を提出するように指示されたりするため、案件によっては日中に実機でデータを取得して夜間に報告書にまとめるなど、一時的に業務量が爆発することもあります。
オンラインテストの実施
事前に実施したオンライン打ち合わせの内容をルーチン開始前にテストする業務です。
理論的には実施できる場合でも、いざ実際に測定すると予想と異なる動きをすることもよくあります。
テストを行い、予想に反する動きをした場合は原因を特定し、修正して再度テストを行う….
この繰り返しにより、事前に打ち合わせた内容を再現できるようにオンラインメーカーを協働します。
何度修正してもどうしても上手くいかない時は、顧客との折衝により運用を変更してもらうこともあります。
顧客トレーニングの実施
顧客が新規装置を使えるようになるためのトレーニング業務です。
他社から切り替える場合、これまでの装置とは操作方法やメンテナンス内容が全く異なります。
ルーチン開始までに顧客が問題なく使用できるようにトレーニングをする必要があります。
会社でトレーニング用マニュアルは準備されていますが、顧客の運用に沿った簡易マニュアルを別途作成してお渡しすることが多いです。
臨床への報告業務の補助
免疫血清検査の一部の項目やTnIからTnTなど項目が切り替わる際、測定値の味方が大きく変わることがあります。
そのため、ルーチン開始前の段階で臨床へ切り替わる項目のアナウンスを行う必要があります。
基本的には検査技師が行う業務ですが、検査技師では対応できない医師からの問い合わせなどに応答するために同席を求められることがあります。
検査技師からヘルプを受けたら適宜対応します。
ルーチン開始の立ち合い
全ての準備が整い、いざルーチン開始となった場合でも、実際使って見るとよくわからない、なんてことは当然起こります。
そのため、ルーチン開始して1週間程度は施設で検査の立ち合いを行います。
基本的には立ってるだけですが、操作方法がわからない場合や、アラームの対処法に困った際など、お声がけがあったら対応します。
まとめ:新規設置施設の立ち上げ業務は結構大変です
新規設置施設の立ち上げ業務は以下の9つに分かれます。
- 顧客と新運用についての事前相談
- 検査機器と検査システムのオンライン打ち合わせ
- 装置設置後のアプリケーション登録
- 顧客要望に応じた基礎検討の実施
- 検討結果の報告書作成業務
- オンラインテストの実施
- 顧客トレーニングの実施
- 臨床への報告業務の補助
- ルーチン開始の立ち合い
アプリケーションスペシャリストの業務が板につくまでは確認漏れや設定間違いなど様々なトラブルに見舞われる可能性が高いです。
上司や先輩への報連相を密に行い、ミスがあってもすぐにリカバリーできる体制を整えておきましょう。
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というわけで今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
それでは!